女組の裏側07
「これなんかどう?」
「・・・・」
何度、おなじ問答が繰り返されただろう。
「こっちの方がいいかしら?」
「・・・・・・」
何分、この状況が続いているだろう。
「それとも・・・」
「・・・ビアンキ」
「なに?」
「そろそろ雑貨の方に行きたいのだけど・・・」
「ちょっと待って、ここで何着か選んでからにしましょう」
「・・・・・」
セレネは困り果てていた。
数時間前、わざわざ護衛の任をアルトに任せてビアンキに買い物に付き合ってもらったはいいものの、彼女はふらりと立ち寄ったひとつの店から離れようとしないのだ。
しかもセレネの今回の目的は衣服ではなく雑貨(日本に来て間もないのでいろいろ必要な物を買いに)。十代目護衛の仕事もアルトに任せたままなので、さっさと買ってさっさと帰る、というセレネの考えは見事に崩壊していた。
ここが勝手知ったるイタリアの地なら一人で見て回るのだが、日本に来たばかりのセレネにとってはいろいろと彼女の説明が必要だ。しかし付き合ってもらっているという立場上、強く言えるはずもなく・・・
「セレネはいつも地味な服が多いから、こういうのは想像しにくいわ」
そう言ってビアンキは数ある中の一着をセレネの胴へとあてた。
「え? ビアンキの服じゃなくて自分の!?」
「そうよ」
当然のこと聞かないでと言い捨てると、またビアンキは服をあさりだした。
「ちょっと待って、必要ない! 今はイタリアから持って来たもので足りているし、それより自分は雑貨が・・・」
「なに寝ぼけた事言ってるのセレネ」
そう言ったときのビアンキの纏うオーラが殺気に酷似していたと感じたのは、セレネの気のせいではないだろう。
「女の買い物は服に始まって服で終わるの。雑貨なんて二の次よ」
「・・・は、はい」
それからすっきりした顔のビアンキと、疲れ気味のセレネが沢田家に着いたのはさらに数時間後のことだとか・・・
***
「今日は楽しかったわね」
「・・・そう、ですね」
20080218
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