年賀状
2008年 1月1日 元旦
「ツナさん、ハガキがこんなに届いていましたよ」
コタツに入ってテレビを見ていたツナに、セレネは束になったそれを運んできた。
「ああ、年賀状だね」
寝ころんでだらっとしていたツナも、一年に一度のそれには興味をそそられたようで、起き上がって年賀状を受け取るとわくわくしながらそれを見始めた。
それらは一枚一枚がとても個性的で、そばで眺めているだけのセレネにとっても、なかなか楽しいものだった。
「あ、京子ちゃんからもきてる! やったぁー!」
と、すっかり上機嫌のツナのとなりで、ふと浮かんだ疑問にセレネは首をかしげた。
「ツナさん、ひとつ聞いてもよろしいですか?」
「ん、なに?」
「なぜこんなに、ネズミのイラストが書かれたものがあるんでしょうか?」
コタツの上に置かれている一枚のハガキを指差して、セレネは問うた。
「え? そりゃあ今年の干支だから・・・」
「エト?」
ツナにとっては当たり前の事なのだが、生まれも育ちもイタリアのセレネには知らない言葉のようだった。ツナもその事に気付き、説明を加える。
「あー・・・イタリアにはそういうのないんだっけ? 俺も詳しく知らないんだけど毎年"十二支"っていう動物を当てはめるんだ、それで今年はねずみの年」
と言ってもなぜそれを年賀状に書くのか、ツナ自身も知らないのでセレネの質問に正しく答えられたわけではない。
「なるほど・・・」
しかしそれでもセレネは納得したようにうなずいた。
そしてまた考え込むような顔をする。彼女はこういうムダ知識(?)が好きだ。
「じゃあ今年はネズミを大事にしないといけないんですか?」
ぼうっとセレネの顔を見ていると、また質問された。
「いや、そういう訳じゃないんだけど・・・」
っていうかネズミを大事にってどう大事にするんだ・・・?
「・・・ではネズミをどうするんですか?」
「ど、どうするって・・・ どうするんだろう? 考えたことないや、ただそういうしきたりみたいなもんで・・・」
そういえば、そうだ。
質問されて気付くなんておかしな話だが、あらためて考えるとわからない。
セレネと同じように考え込んでいると、小さく笑われてしまった。
「・・・日本の文化は奥が深いんですね」
「そ、そうだね・・・」
その後、微妙な空気が流れたのは言うまでもない。
***
なんで新年早々こんなに気まずいんだよ?!
20080101
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