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 サーカス当日の夕方、三人が任務に出ようとすると、玄関先までサノが付いて来た。
「気を付けて」
「ん。ありがと」
不安そうな顔をするサノに、キタムラは微笑みそう言うと、白っぽい髪が揃う頭を片手でくしゃくしゃと撫でた。
「夫婦みたい」
キタムラの隣に立つミハシが笑う。
 和やかなこの時間が、サノを一層不安にさせた。もし、もうこんな時間が一生戻ってこなかったら。
 そんな思いが幾度も頭を過ぎる。いつも仲間を任務に送り出すのは正直なところ辛かった。
「じゃ、留守番頼むよ?」
「はい」
 キタムラの姿が消える。
「じゃ」
「うん」
 ミハシの姿が消える。サノの正面にオオサキが立った。
「いってきます」
オオサキは俯き気味に言い、サノを向く。その時サノの口が「ってきて、」と小さく動いたのを、見た。
「あ? ごめん、聞こえなかった」
「ううん、何でもない。行ってらっしゃい」
 そうか、と相槌を打ったオオサキの姿が、消えた。
 無事で帰ってきて。
 そんな事、そんな不安にさせるような事は言えない。
 戦う力は十分に持っているのに、体が弱いが為に何の力になることも出来ない。
 情けない。
 悔しい。
 サノは壁に凭れるとずるずると腰を落とし、小さく肩を震わせた。

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