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変わらぬ笑顔が心地良い










家に帰った後は普通に過ごした。
兄貴に「そろそろ髪鬱陶しくないか」と言われたが「別に」と言った。
この髪は俺の自慢の髪。
切るつもりは今のところない。
どこまで伸ばすとかも決めてねえが……まぁ、気分だな。


「はー……眠い」


今日はテニスやってねーから妙に身体がぬるい。
それに、苛々してるような気がする。
はぁ………。
その日はベッドに入っても寝付くのに時間が掛った。
何だか胸のもやもやが治まらない……。

俺は半ば無理矢理目を閉じて眠った。








寝た気がしねえ。
朝になって空をみたら今日も快晴。
暖かな日差しが余計に眠気を誘う。
こんな日は、学校に行くのが嫌になるな。
だが俺は学校に向かう準備を何時もより早く始めた。
昨日、約束したからな。
日向と仲良くするって。
それには学校に行かなきゃ始まんねーからな。


「っし……今日は朝練もあるし、早めに行くか」


俺は朝食を流すように食べてそのまま家を出た。

学校に行くまでの距離は対して長くない。
ただ、いつもと違って少し登校する連中は少なかったな。
そんなことを思いながら学校まで行った。
そしたら、


「よう、宍戸」
「……何だよ跡部」


校門を通ってコート付近まで来ると、跡部に声をかけられた。
なんだ?挨拶か?
……気持ち悪ぃな。


「お前、今暇だろ」
「……はぁ?俺は、これから朝練……」
「今俺は手が離せねえ。忍足や岳人もだ。……だから、ジローを連れて来い」
「…何で俺が。そーゆーのは樺地の仕事じゃねーのかよ」
「今日2年は朝練には来れねえ。そこで、お前の出番だ」
「……いや、俺出さなくていいし…」


ジローを起こすなんて俺には無理だ。
昔っからあいつは寝たら起きねえし……。


「幼馴染だろ?」


……だから何なんだよ。
それがどう関係あんだよ!


「っつか、俺昨日からテニスやってねぇんだけど…」
「それは自業自得だろーが」
「………」


まぁ確かにそうかもな……って、納得させられてたまるか!


「ジローは朝に弱いから仕方ねーだろ?起こしに行ったとこで朝練に間に合うかも……」
「朝だけじゃねえ。放課後だって昨日来てねーだろ?今日はちゃんと来るように言っとけ」
「………」


あー言ってもこー言う……。
っとに、跡部は嫌な奴だぜ。
こういう時は大人しく諦めねーとな……。


「……わーったよ。起してこればいいんだろ?」
「ああ。さっき屋上にあいつの姿が見えた。じゃあな」


それだけ言うと跡部はさっさと仕事に向かった。
……ほんとに態度のでけえ奴だな。
礼くらい言えっての。


「……ま、いいけどよ」


跡部がお礼を言う姿を見て少し嫌だと思ってしまった。
俺は足取りは重いが屋上へと向かう。


「あー……っとに今日は絶好のテニス日和だな」


屋上のドアを開き、少し近く感じる空を見て呟いた。
そして、フェンスに目を向ける。


「……こいつにとっちゃ、絶好の眠り日和か」


気持ちよさそうに寝てやがる…。
どうしてこうも寝れるか不思議でしょうがねえな。
鞄を近くに放り投げて、俺はジローを起こしにかかる。


「おいジロー。起きろ。今日こんなに早く来てんだからテニスやろうぜ」
「………ん〜」


俺の言葉に寝ぼけたまま反応するが、すぐにまた夢の中へ落ちる。
……させねーよ!


「おいジロー!お前が起きねーと俺が困るんだよ!」


丸くなったジローの身体を揺らして起こす。
少し強引だが、こうでもしねえと起きる気配は皆無だからな。


「ぅ……ん……?あれ〜……?亮ちゃん?」


俺の顔を寝起きの少々腫れぼったい眼を擦り目を細くして見た。


「その呼び方は止めろ。……どうだ?起きたか?」


ジローは俺だと判ると両腕を上に上げて伸びをした。


「うん……起きた………と思う」
「思うじゃだめだろーが。ほら、朝練行くぞ」
「A〜?今日こんなに良い天気なのにぃ?」
「だからこそ、スポーツだ」
「いーやーだ!俺はここで昼寝するって決めたの!」
「今はまだ朝だろ………じゃなくて!決めんなそんなこと!」


少し怒鳴るように言った。
それでもジローは不満のある顔をした。


「亮ちゃんのケチー」
「うっせえ。つか、その呼び方は止めろっつっただろ」
「Eーじゃん。幼馴染なんだし」
「だからって……ガキみたく呼ぶなよ」


呆れて言うとジローはぶつぶつと駄々をこねる。
ちょっと、マジで引っ張ってかねーと時間が……。

キーンコーンカーンコーン。


「あ、時間だ。ってことはこれからHRだね!」


にっこにっこと満面の笑みを浮かべて茫然とする俺を見るジロー。
……結局ジローに振り回されて終わったか。


「ね、ね。一緒に授業サボって寝ようよ!」


眠れることがそんなに嬉しいのか少し覚醒したみたいに興奮してる。
まぁ……俺も授業はサボろうかと思ってたしな。
今日は眠った気がしねえし。


「……分かった。でも、放課後の部活には出ろよ?」
「りょうかーい!」


ジローは俺に、約束だから!と言った。
そんな無邪気な姿を見ると、不思議と昨日までのもやもやが無くなるような気がした。


「ねー、跡部のクラスに転校生来たって本当ー?」
「……あぁ、来たな」


日向の事か……。
っつかジロー……寝ないのか。


「どんな子だった?可愛Eー?それとも、忍足みたいに眼鏡かけてる?」


どうして忍足みたいに眼鏡をかけているのか気になるのかは知らねーけど、俺はとりあえず答える。


「まぁ…可愛いというか……綺麗、?」


第一印象で思った事を言ってみた。
そしたらジローはへぇ、と興味があるような顔を見せた。


「そうなんだー。見てみたいなー」
「……見てねーのか?式は出たんだろ?」
「あはは、ずーっと寝てた」
「……予想はできるけどな」


よく跡部に見つからなかったな。
…いや、見つかったとしてもジローだから仕方ないとか思ってたりするんじゃねーだろうな。
そんな贔屓があるかよ。


「やっぱりー?」


ジローは照れたように頭をかいて笑った。
……いや、何も照れさせるようなことは言ってねえんだが。

その後もしばらく談笑してた。
久しぶりにジローと話したからか……何だか昔の懐かしい記憶を思い出してた。










変わらぬ笑顔が心地良い
(ほんと、昔から誰でも惹き付けるような笑顔をする奴だしな)








あきゅろす。
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