風に揺れる桜のように
「よっ!宍戸〜」
「……何だ、岳人か」
「むっ!何嫌そうな顔してんだよ〜!」
「またお前と同じクラスだからだよ……」
始業式が終わったのを見計らって、教室に戻る。
机に伏せっていた俺に話しかけたのは岳人。
去年に続いて、また同じクラスになるとはな。
「宍戸、自分式来んかったやろ」
呆れた様子で岳人の横に並んだのは忍足。
……こいつも同じクラスなのか。
「そうだぜ!俺だって眠いの我慢して出たのに〜」
「後で、跡部にどやされるで?」
「……分かってるぜ」
どうやら、跡部は違うクラスらしい。
良かった。
「じゃあ、宍戸は噂の彼女≠フこと知らねーんだな?」
岳人がニヤニヤした様子で言った。
「噂……?」
「ああ、そうやな。宍戸は知らんやろな」
忍足も頷いた。
……一体何の話をしているんだ。
「おい、噂って……」
言いかけた時、教室のドアがガラっと開いた。
「おーい、席に座れー」
今年の担任だろう。
教壇に立って咳払いをした。
「うえー、去年と同じかよー」
「飽きたっつーのー」
「はいはい静かに。出席を取るぞ」
クラスがざわざわしている中、俺は何となく窓の外を見ていた。
窓際って気楽だからいいよな。
丁度、朝の桜の木が見えた。
今も風が吹いているのか、ピンクの塊がユラユラ揺れていた。
「おい、宍戸」
「………跡部」
その日は式があったから、授業はほぼ無い日で終わった。
勿論、部活も無い。
玄関を出て、家に直行しようとした時、目の前に仁王立ちした人物。
それが跡部だった。
「てめぇ……あれだけ式には出ろって言っただろ」
「あー……寝坊した」
「嘘付け」
「……少しは信じろよ」
「無理だな」
………こいつはとことん疑うタイプだな。
「はいはい、悪かったって」
「全然反省してねーだろ」
「…んなことねえって」
一回も目を合わせずに言った。
すると、跡部は溜息をついて、
「……しょうがねえな」
どうやら、今回は見逃してくれるみたいだ。
珍しいな。
「明日の放課後の部室掃除で許してやるよ」
やっぱり、跡部は跡部だった。
これ以上反抗しても結果は悪くなる一方だと思い、俺は渋々承諾した。
気分は良くないまま、真っ直ぐ家に帰った。
風に揺れる桜のように
(俺の気持ちも、何だか落ち着かなかった)
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