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約束を守る為の実績










あれから1ヵ月ほどが経ち、いよいよ始まりの時がきた。
地区大会、都大会、関東大会、そして全国――
俺達正レギュラーの面々は、いつも以上に気合が入るようになった。
日ごとに、ギャラリーの声援も大きくなっていくような錯覚も起きるほどに。

去年、俺達が2年の時も3年の先輩たちが大会に出ているのを見た。
普段の部活では絶対に見れない、あの迫力。
俺はあの時心に決めたんだ。

いつか、全国の舞台で戦ってやる―――

俺一人の、力で。
でも、今年は去年と違うところが一つある。
それはもちろん、あいつが居ることだ。


「もうすぐだね」
「……ああ、そうだな」


日向だ。
今年は、日向が居る。
日向は、この1ヵ月ほどでマネージャーと似たような位置にあった。
跡部の配慮だろう。
正式なマネージャーではないが、榊監督からも許可をもらったらしい。
変化はそれだけじゃない。


「亮くん、シングルスに出るんでしょう?」


日向は、俺達テニス部の正レギュラーのことを名前で呼ぶようになった。
その発端は岳人と忍足だけどな。


「ああ。シングルス3からは正レギュラーだからな」


上手くいけば、俺の試合で勝負が決まる。
普通ならプレッシャーのかかる位置だ。
だが、俺にはそんな気持ちは微塵もない。
誰だろうが……絶対に倒してやる!


「頑張ってね。私、精一杯応援するから」
「おう。任せとけ。俺が、全国の舞台を見せてやるよ」
「ふふ、ありがとう」


そんな、変わらない日常の、部活終わりの少しの会話。
後に跡部たちが来るだろう。
俺はただ、本気で思っていただけだった。

俺が、全国の舞台を見せてやるよ

純粋に、日向との約束を守ろうとしていた――







地区大会は順調に勝ち進んだ。
まぁ、地区大会なんかで負けるような氷帝じゃねぇけどな。
結果発表が終わり、それぞれが帰っていく時。
日向たちを見送った後、俺は何時もの通り、あの二人と帰っていた。


「あー、宍戸はいいよなー」
「……何がだよ」
「だってさー、未胡に良いとこ見せられるじゃん」
「はぁ?」


少し不貞腐れたように岳人は唇を尖らして言った。


「ほら、あれや。俺らダブルスは関東までお預けやからな」
「シングルスでぐわっと決める氷帝の方針じゃ、今んとこシングルスの方がオイシイってこと」
「……お前ら、んなこと考えてたのかよ」


呆れた。
真剣に試合してる俺を何だと思ってるんだ。


「せやけど、良かったやん。試合の後未胡ちゃんに声掛けてもらえて」
「……うっせ」


忍足が日向のことを名前で呼んでいるのは、日向に了承を得たからだ。
だから、日向も俺達のことを名前で呼ぶ。
……俺はまだ慣れなくて、苗字で呼んじまう時があるけどな。


「宍戸だけずりぃー」
「んだよ。………もしかして岳人、日向の事……」
「何?心配なのかよー?」
「ちっ違えよっ!ただ、お前の態度がだなっ……」
「はいはいストップ。宍戸、心配せんでも俺ら二人は自分の味方やで」
「………」


そんなスマイルで言われてもな……。
忍足の笑顔は何だかねちっこく思えるから信用できねえ。


「未胡は友達として大好きだぜ。他に居ないタイプだし?」
「……そーかよ」


何かちょっとイラっとした。
友達として大好き?
そうか、だったら俺も……


「宍戸みたいに未胡に恋してるってのとはちょっと違うぜ」


あっさりと俺の心情を否定するな。
ったく……。


「まぁ、次の都大会でもええとこ見せたり」
「……ああ」


最後の忍足の言葉は素直に受け取ってやった。
俺も丁度そう思ってたしな。
これも、日向を全国へつれていく為の一歩となるから……。

俺は、勝ち続けないといけないんだ。










約束を守る為の実績
(アイツの笑顔が約束を思い出させ、俺の力となってくれる)








あきゅろす。
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