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君の小鳥になりたい
※エンディングから3年後、ジタンはまだ盗賊





ジタンが戻ってきてからもう3年もの月日が流れた。
アレクサンドリアにはもう戦いの爪痕さえ残っていない。
ほんとに平和になったのだな、とほっとすることもしばしばだ。
ジタンは今も盗賊をしていて、世界を飛び回っている。
もう3年。3年も経ったのだ。
16歳だった私達はもう19歳、10代最後の年を迎えようとしている。
スタイナーやベアトリクスにはもう身を固めた方が、とかいろいろ言われているがその気にはなれない。
この国を治める者としては結婚することは大事だが。だが、きっと彼と一緒になりたいという私がいる。
だって、彼は私の初恋だから、ずっとそばにいてくれたから、これからもそばにいてくれるという淡い期待をしているのだろう。
そんな考えを張り巡らせていると、コンコン、と部屋をノックし、スタイナーが入ってきた。


「ガーネット様、劇場艇プリマビスタが到着しました!」

「ありがとう、スタイナー」

「はっ!」

敬礼をしたあとにスタイナーは顔を少しこわばらせながら、口を開いた。


「ガーネット様、ジタン殿に会われてはいかがかと自分は思うのでありますが」

スタイナーの言葉に驚き、暫く唖然としてしまった。
まるでスタイナーには私がまだジタンの事を好きだという気持ちがバレているような、そんな気がして驚いたのだ。
ようやく、はい、と返事を返すことができた。


(ジタンにまた会えるのね)



3年前、私が初めて城を抜け出した時の格好をして街へ出掛けた。
流石に王女様と在ろう者が歩いていたら大騒ぎになるだろうから。
やっとプリマビスタに着くと、見慣れた顔があった。
ブランクだ。ぺこりと一礼すると、私に気付いたらしく、ジタンを呼びに行ってくれた。
暫く待っていると、大急ぎで掛けてくる足音が聞こえ、自然と顔が明るくなった。


「ダガー!」

「ジタン!」


ジタンはあまりの嬉しさと走ってきた勢いで私に抱きつくとくるくると回りだした。
やっぱり、ジタンは変わってないんだなと安心。
背は大きくなっているが。


「はは、ダガーお前変わってないな、安心したよ」

「ふふ、私も安心したわ、ジタンが変わってなくて」


お互いに同じような事を言い、思わず笑顔が零れた。
暫く2人で歩きながら話して、時間も忘れるほど、幸せだった。
あの会話をするまでは。


「ダガーはその……どっかの王様と結婚すんのか?」

「……どうして?」

いきなりのジタンの言葉に胸が苦しくなった。
どうして?もう私のことは、どうでもいいの?心にはその言葉がループしている。

「だってさ、ダガーは王女様だろ、だから王様とかと結婚すんのかなって、ほらオレ王様でも何でもないしさ、身分違う、だろ?」

「でも、でも、そんなの関係ないわ!」


思わず、声を上げてしまった。
本当は、こんなことを言いに来たのではないのに。
そんな私に驚きつつも、ジタンは笑って口を開いた。


「オレも王様だったらなー………な、ダガー、お前も王女なんだからさ、幸せになれよ?」

「ジタン……」

「こんな盗賊を愛するよりさ、もっと幸せにしてくれるやつと、な」

「………ええ」

「………………じゃあ、夜の公演、楽しみにしてろよ」


声を掛ける暇もなく、彼は去っていった。
でも、ジタンの後ろ姿がとてつもなく寂しさを隠していたのは、分かった。
きっと彼なりのか考えなのだろう。
そう言い聞かせているのに、心は、確かに泣いていた。




「今の世の中身分なんて関係ないんじゃないか?王様になるのなんて」

「そりゃそうだけど、ダガーにはこれが幸せなんだ」










城に帰り、ボーッとしていると、コンコンとノックの後にベアトリクスが入ってきた。


「ガーネット様、ジタン殿に会ってきたのですか?」

「ええ」

「ではジタン殿に結婚の申し込みを?」

どきりとし、同時に悲しみがこみ上げてくる。
もう、変わらなくては、と笑顔を作り、微笑んだ。


「私、他の国の結婚の申し込みを受けます」

「ガーネット様……」


ベアトリクスにはその笑顔が通用せず、その悲しみが伝わっていたらしい。
私の手を優しく、優しく握りしめ、跪いたベアトリクスは口を開く。


「ガーネット様、それであなたは幸せになれるのですか?」

「国民の幸せは私の幸せです」

「ガーネット様、違います。それは、違います。」

「…………」

「私も本当はこの国を去ろうと思っていました。ですが、スタイナーが、大事な人がそばにいてくれたから、今の、幸せな私がここに居るのです。」


ベアトリクスは何か大切な事を、一生懸命に伝えていた。
それは私にとても重要なことで。


「………ベアトリクス」

「だから、ガーネット様、本当に自分が幸せだと言える人と一緒になってください」

「ベアトリクス……っ、私、ジタンの事が……!」

「なら、どうか、お幸せになってください」

ベアトリクスに背中を押され、思わず涙が零れた。
この溢れる涙を、勇気に変えて。













一方、ジタンも自分が言った事に今も尚後悔をしていた。
そんな彼に訪問者が一人。


「スタイナーのおっさん……」

「久しぶりである」

「なんだよ」

「これと言って、頼みがあるのだ」

「?」


首を傾げると、スタイナーが、あのスタイナーがジタンの前に跪いたのだ。
この行動には予想もしていなかったのでジタンは混乱した。


「ガーネット王女と婚約をして欲しいのだ」

「なっ、何言ってんだよ!」

「自分は本気だ!」

「………」

スタイナーは本当に、本当に本気だ。
行動一つ一つからも気持ちがわかった。


「オレはただの盗賊だぜ?」

「そうだ。だが、ガーネット様には、ガーネット様には……ジタン殿がいないとだめなのだ!」

「んなわけ……」

「ガーネット様はずっと、ジタン殿の事を想っているのだ、だから、ガーネット様を幸せに出来る、任せられるのは、ジタン殿だけなのである!」

「そうか…」

「ジタン殿……」

ある決意を固め、スタイナーに後押しされ、ジタンは時間が迫っている演劇をするために上に向かった。
すると、心配そうなスタイナーに呼び止められ、振り返る。


「劇、楽しみにしてろよ!」






時は過ぎ、劇が始まる時間が訪れた。
ガーネットは再会したときと同じようにロイヤルシートに座っていた。

(ジタンがいなくなってしまう前に伝えなければ)


劇団長、バクーが現れ、あの時と同じように劇の説明を淡々とし始めた。
まるであの再会をリプレイしてるように思えた。


「さあて、お集まりの皆様!
今宵、我らが語る物語は、はるか遠い昔の物語でございます物語の主人公であるコーネリア姫は、恋人マーカスとの仲を引き抜かれそうになり……
一度は城を出ようと決心するのですが、父親であるレア王に連れ戻されてしまいます。
今宵のお話は、マーカスとコーネリア姫が、駆け落ちの決心をするところから始まります。
それでは、ロイヤルシートにおられますガーネット様もスタイナー様もベアトリクス様も……そして貴族の方々も、屋根の上からご覧の方々も、手にはどうぞ厚手のハンカチをご用意くださいませ。」



バクーの釈が終わり、本題の劇が始まった。
今回もマーカス役はジタンらしい。
見入るのと同時に、気持ちが膨らんでいった。
劇もそろそろ終わりを告げる。
早く、伝えなくては。



「マーカス、これ以上は待てないぜ、出航だ!」


シナが去り、マーカスを演じるジタンがセリフに息を吹き込んだ。



「私は裏切られたのか?いいや、コーネリアに限ってそんなことは……信じるんだ!信じれば、願いは必ずかなう!太陽が祝福してくれぬのなら ふたつの月に語りかけよう!

おお、月の光よ、どうか私の願いを届けてくれ!」





ふと、あの時のジタンの言葉が再生された。
『会わせてくれ、愛しのダガーに!』
今度は、自分から告げなくては、と立ち上がると、ジタンが劇場から降り、此方を見上げた。
そして、優しく微笑むと跪く。
何事かと見つめるとジタンが口を開いた。


「ダガー、いいえ、ガーネット王女様、わたくしめは、あなた様の事を愛しています。」


その言葉を聞き、思わずガーネットはその大きな瞳からぽろり、ぽろりと涙を溢れさせた。
ふう、と息を吐き、心を決めたジタンが力強く、ガーネットを見つめた。



「よければ、わたくしめと結婚してくださいますか?」


その意外な言葉に、ガーネットはとうとう先ほどの涙とは比べものに成らないくらい大きな粒を流していた。
ガーネットは思わずジタンの元へと飛び出して行った。
今度は自分からジタンの胸に飛び込み、優しく抱き合う。


「私の、そばにいてくれるのですか?」

「ずっと、そばにいます」



その言葉にガーネットは、嬉しくなり、微笑んだ。

もちろん、返事は。




「よろこんで」




ようやく、君の小鳥になれた。



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ジタガネでプロポーズな話でした!




ジタンは自分の気持ちよりガーネットの幸せを願うと思いまs
とりあえずお幸せに!



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あきゅろす。
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