short
シエルの誕生日



誕生日


「ヴァーン!」
バンッ!

「うわっ!エッチっ!…」
赤毛の少年ヴァンクールは勢いよく入ってきた金髪の少女、シエルを見て深いため息をついた。
「って…このくだり、おかしいだろ?」
小さな子供に注意するみたいに優しい声音でヴァンクールは囁く。

ヴァンクールは腰にタオルを巻いた状態で扇風機に当たっていた。
つまり風呂上がりの瞬間にシエルがやって来たのだ。

「なぁ〜。このくだり今まで何回あった?」
ヴァンクールがせっせと短パンを履きながら尋ねると、シエルはうぅーっと考えて
「あたしがくるときにヴァンが裸なのがいけないのよ!」
そのまま、ビシッとヴァンクールを指さした。


それを聞いてヴァンクールは目を丸くしてからクスクスと笑う。

「それより何しに来たんだ?」
するとシエルは紙袋をヴァンクールに渡した。

「?」
「フェアリーから。
誕生日プレゼントだって。」
それを聞いた瞬間、ヴァンクールの目が輝く。

紙袋を開けると、そこには金色のピアスが入っていた。
ヴァンクールが左だけあいた穴にピアスを通しているのを見て、
「へぇー可愛い。」
とシエルが嬉しそうにするので、
「そういや、シエルの誕生日、聞いてなかったよな。」
と、ヴァンクールは不意に呟いた。

するとシエルは
「あたしスラム出身だから、誕生日なんか知らないんだ。」
と眉を下ろす。
その瞬間、ヴァンクールがシエルの頭を撫でた。
「?」

「わかった。今からショッピングエリアに行くぞ。」

ヴァンクールが急に変なことを言い出すから、シエルは少し戸惑う。


ーーーー

2人はショッピングエリアに来ていた。

「じゃあ後でここで待ち合わせな。」

ヴァンクールが買い物が好きなのは以前から知っていたが、何も用のないシエルにとっては退屈極まりなかった。

シエルは適当に店を回って、広場のベンチに座っていると、
「シエル、お待たせ。」
ヴァンクールが小走りで走ってきた。

「買い物でき「おめでとう。」」
シエルが尋ねようとした瞬間、言葉を遮られた。

「えっ?」
何が?
ヴァンクールはシエルに紙袋をつきだす。
「開けて。」
言われるがままに紙袋を開けると、中には落ち着いたベージュのカチュームが入っていた。
「これなあに?」
シエルは可愛いと思いつつも一応聞いてみる。

ヴァンクールはニコニコしながら
「誕生日ないのは辛いだろ?
だから、シエルの誕生日は今日だ!
俺とおんなじ。」

「えっ?」
シエルの瞳から大粒の涙がこぼれる。

「わっ!泣くなよ〜」


いつも誰かを幸せにしてくれる
あたしはそんなヴァンが大好き。


ーーーー

実はあのシエルの象徴でもあるカチュームはヴァンからの贈り物でした。

シエルの大好きはどの大好きなんでしょうね。

ちなみにマリは嫉妬なんかしません。

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あきゅろす。
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