いただいたSS
斐獅谷籠瑪さんから
 みんな 暖かい空の下にいる
 私たちは 太陽の子供


太陽の子供



 久しぶりに姉弟三人で出かけることにした。そんな提案をしたのは弟の片割れである響だった。その理由はあまり分からない。高校生になってから、姉弟として、家族としての団欒というものはなかった。
 だからなのか、こうして出かけるのは何年ぶりだろうと思ってしまう。たどり着いたのは、幼少の頃に両親に連れられてきた大きな公園。
 小さな子供たちが、ブランコや滑り台などに乗って遊んでいる。
 日傘をさして、主婦達が井戸端会議をしている。いつもと変わらない光景。子供たちがはしゃいでいるのは、天気が優れているから。やっぱり外が一番、と奏は腕を伸ばした。三人の前に、サッカーボールが転がってくる。
「お兄ちゃーん、取ってぇ!」
 遠くから五、六人くらいの子供の声が聞こえる。響はおう、と子供達に向かって、取れるような力でめいっぱいに投げつけた。子供たちはありがとう、と両腕を使って大きく手を振っている。おう、と響も答えるように子供と同じように真似をした。
 日射しが次第に強く照りつける。はしゃぎ続ける子供たちは、暑さを知らずに遊んでいた。懐かしい。
 中央の噴水広場へと足を運べば、とても涼しく感じる。
「懐かしいなあ」
「何が?」
「昔、此処で姉ちゃんが噴水に落ちてびしょぬれになって泣いてたなあ」
 赤裸々に爆弾発言をする弟に、祭は頬を赤くした。何か言い返そうとするが、口をパクパクしているだけで、言葉が出ない。いくら過去話とはいえ、恥ずかしい思い出は消えても消せないものだ。
 祭は、鉄棒の後ろに設けてあるベンチに座る。鬼ごっこをする子供たちを見ていると、突然一人がこちらへとやってくる。腕を引き、一緒に鬼ごっこをしようと誘ってきた。断ろうと思ったが、響はいつの間にかの少年達と混じってサッカーをしている。奏も砂場で遊んでいる子供たちと一緒に遊んでいた。
 祭は一息つき、返事の代わりに深く頷いた。


 祭が子供たちと鬼ごっこをしていると、母親たちが帰るよと声をかけてきた。彼女たちは祭に深く頭を下げ、礼を言う。こちらこそ、と祭も深く頭を下げて顔を上げると、空はいつの間にか橙に染まっていた。
 昼間にうるさかった蝉がしんとやみ、公園は閑散としている。
「そろそろ帰ろう。暗くなっちゃう」
 奏と響は、ガキじゃねぇからと苦笑を浮かべる。祭の一言が母親くさかった。家へ帰る頃には、家の灯りが少しずつぽつりとつくだろうと三人は思った。

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