うまいメシもまずいメシに
アシェルとヴァンクールはいつも通りへらへらしているキセキについていく。
キセキはいまからの夕食で騎士団と対面するということで、警戒している二人に
「みんな公私混同しないから、いつも通りしてればいいよ。」
とニカッと笑った。

アシェルはともかく、ヴァンクールは生死がかかってくる問題でもある。
『ヴァンクールすごく強ばってるね。』
フレイルが隣で心配したように呟いた。
なるべく出さないようにはしているようだが、右手がすでに透明の銃を持っているようだった。いつでも心刀を出せるように構えているということだ。

「さきにヒロたちは来てる。」
大きな扉を前にキセキが振り返る。
『ヴァン。大丈夫?』
マリが心配そうにヴァンクールの構えた右手に両手を添えた。
(ああ。恐らくこの会合では何も起こらない。大丈夫だよ。)
ヴァンクールがスッと息を吸った。
それを見てキセキがゆっくり両開きの扉の片方を開ける。

音もたてずに大きな扉が開いた。
「おおー!おそいじゃねえか!
席はここ!」
開いた瞬間に大きく手を降って空いてる席を指差したのは、以前、バレンチアでヴァンクールに刺された男、ウェルテスだ。
「あっ!おまえは!」
ウェルテスは休む暇なく、ヴァンクールを指さして大声を出した。
「うるさいなあ。」
そこに口を挟んだのはエージェントだ。
個人個人でしゃべっているから、食卓は本当にうるさかった。
「いいじゃないかエージェント。
いつもより人数が多くて嬉しいよ。」
ランスはにっこり笑うと、入り口で呆然と立ち尽くしているアシェルとヴァンクールを手招きする。気がつけばキセキはすでに席についていた。

「あ、じゃあ。」
アシェルはへらっと笑うと先ほど指定された席に向かう。
ヴァンクールも渋々、アシェルの隣の席についた。
ヴァンクールが食卓を見回すとシエルはいない。まだ調子が悪いのか、それとも拒否したのか……。
(俺も来ないでよかったら来てなかった。
みんなでいる方が安全だし、それに騎士団の機嫌を損ねるのだけは避けたいからな。)

「うん。みなさん席につきましたね。
それではシェフが腕によりをかけたディナーお召し上がりください!」
ハンクの呼び掛けによって、夕食は始まった。



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あきゅろす。
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