逃げなきゃ!


椿はメスを顔の前に持っていった。


やったか?

ーしかし
スタッ。
2人とも地面に着地する。

椿は…
無事のようだ。
「ランナ君の糸を借りたよ。」
そういって、全てのメスを地面にガチャンッと投げ捨てた。


…ランナの強度のすごい糸で婉那の刀の攻撃をふさいだのだ。



次の瞬間、
ランナの目の前に刀が現れた。
「…!!」
バタンッ


ランナは避けるために地面に倒れた。
しかし、血飛沫が空にとんだ。

「ランナ!」
婉那が叫んだ瞬間

「うっ!」
という、椿の小さい声と空に向かって飛んでいく一本のメス。

そのまま椿はジャンプして、薬倉庫の屋根の上に着地した。

椿は左腕を押さえている。

「ランナ!」
婉那がランナに駆け寄る。
「痛ぇ…」
ランナの顔ののぞきこむと、ランナの目の間からデコの頂上にかけて浅い切り傷が出来ていた。


「あと一瞬、気づくのが遅かったら。確実に死んでた。」
もし気付いていなかったら、…頭を串刺しにされていた。


婉那は椿をジリジリと睨み付けた。

椿は「ふー」と息をはいてランナを見てから自分の指を刀できりつけた。


…っ!
「どうしたの。」
婉那がすごく驚いたのに気づいたランナはたずねると
「ランナ!にげて…」
少しおびえたように小さい声で呟いた。

「え?」

「私が時間稼ぐから!ランナは逃げて!心刀にする気だから!」
婉那は「はあはあ」と呼吸を整えながら、東を指差した。

ランナはジリジリ下がりながら婉那と椿を交互に見た。

婉那は椿を思い切り睨み付けている。


「婉那っ!」
ランナはデコを押さえながら焦りながら。

「取り返しがつかなくなる前にはやくっ!」
婉那は精一杯怒鳴ったのだった。


ランナは意を決して後ろを向いて全力ではしりだした。
(婉那…)



走っていると、遠くで
「はぁ!」
という婉那の声と、
ガキンッ
といえ刀のぶつかる音。







…何分走っただろう。
森の中を必死に東に進んだ。
村に戻る一番の近道なんだろう。



婉那はどうなっただろう。

本当にそう思った瞬間だった。
目の前が一瞬真っ暗になったのだ。
(はっ?)

いや周りは明るい。
「なんで?」

顔をあげるとあのさらさらの茶髪がなびいていた。
そして体に鋭い痛み。
目の前に血飛沫。

(そうだ思い出した。
騎士の力。)
…空間をさいて、移動をすることができる。


ランナがよろめいて後ろに転けそうになった時、
ぐっ、と右腕を捕まれた。


そしてそのまま右指を刀で切られた。
「ごめんね。私とあなたが医者だから、」
(やばい!)
とっさに逆の手から糸を出す。
最高の強度にした糸は椿の体を貫いた。





が、
指を重ねられてしまった。


2人をすごい光が包む。


ーーーー


その光はどこからでも見えるような光だった。


「ランナ…!」
左足の太ももに自分の刀をさしたまま。
婉那は涙を流した。


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