医者、椿

「…。」
ランナはジリジリとヒロの姉を睨み付けた。

「ランナ君だよね。
私はシルビア・ブラック。
またの名を、芳賀椿。」
とランナを真剣な眼差しで見つめる。


やっぱりヒロのお姉さん。

「なんで、僕を殺そうとした…!?」
ランナは色んな気持ちをおさえながら、静かに尋ねた。


椿は腰についた刀を抜いた。

「それはね。あたしが医者だから。」
ランナは全身から汗が吹き出しているのに気づいた。
ーすごい殺気だ。

(ヒロ兄ちゃんより強いかもしれない。)

椿はランナを殺す気でいる。

そう思った婉那は腰にぶら下がった短い刀を抜いて、
「私も手伝うよ。」
とランナに合図した。



ランナは戦いたくなかった。

しかし逃げても、逃げ切れないような異様な殺気を放っていた。



ランナは一本メスを取り出すと、椿に向かって思い切り投げた。
ビュッという風をきる音がして
カキンッというメスを落とす音が聞こえた


椿は美しい色の刀を手の中で踊らせる。

刀身は薄い桃色で、ヒロの刀の対なのだろうというのがわかる。


そしてランナの方にビュッと刀を降り下ろして。
「ごめんね。」

その瞬間椿がランナの視界から消えた。

(!動かないと、)
その殺されるという、危険意識だけがランナの体を動かす。


その瞬間ランナのすぐとなりを椿が通ったのはわかった。

そして
ガキンッ
と金属と金属が激しくぶつかりあう音がした。

「くぅっ!」
婉那が苦しい声を出した。
ランナはそのこえの方へメスを何本か投げつける。


しかし椿はそれに一瞬で気付き振り向いたと思うと、上に高くジャンプした。

それを避けたということはその先には婉那。


しかしその事はランナの想定内だったから、

ランナはメスを投げた両手をクイッと引いた。


すると婉那に向かっていたメスが軌道を変えて、椿の方へ向かっていく。

メスに糸をつけていたのだ。
空中だから避けられないはず…

ーしかし。
「やるわね!」
椿は嬉しそうに笑うと、なんと刀を鞘にしまう、


「なっ!」
両手を空に捧げながら、ランナは目を疑った。
彼女のたった一つの武器をしまったから。
しかしメスは椿に向かっていく。

一瞬だった、
椿はそのメスを一本ずつすごいスピードで全て指の間におさめたのだ。
手の動きが見えた者がいただろうか?
ランナはメスにつけた糸の強度をあげた。

(このままだと、俺ごと飛ばされるか、糸を切ればメスを投げられる…!)


すると椿の真うしろ、体が合わさるように影が見えた。

「婉那!」

「はぁあ!」
婉那が真後ろから思い切り刀をふった。


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あきゅろす。
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