(ヴァン、言えたかな?)

シエルは名物「すし」を食べながら考えていた。


4人が行ってしまってから3時間くらい経っている。
『きっと大丈夫だよ。』
シャインがよこでにこにこしている。ヴァンなら大丈夫。


シエルはさっきから観光を楽しんでいる。

ランナは一人でここの医学について学ぶと言っていた。

ヒロは宿で眠るらしい。


はっきり言ってシエルは暇だった。


幻のトロを口にしようとした時、

ヴーヴー、
「うわっ」
ぺたっ

携帯が久々になるのにびっくりして、シエルは飛び跳ねた。

右手を見るとトロが消えている。

シエルは震えながら机のしたを見た。


床に転がっていたのは新鮮なピンクのトロ、
シエルは出そうな涙をこらえながら、携帯を開く。
「ヒロ…」
さっと内容に目を通すと、
ー俺は英っていう宿にいるんだけど来てくれない?ー

(どうでもいいー!)

少しイライラしつつ、携帯をたたむ。

「おじさん。英ってどこ?」
寿司屋のおじさんはその言葉にびっくりして、

「お嬢ちゃんの行くところじゃないよ!」
と慌てた。

「どういうこと?」
シエルは目を丸くしておじさんを見ると
おじさんは急に頭を下げた。

?(意味がわからないんですけど。)

「深いわけがあるんだよね。」

「ただの待ち合わせだよ!」
するとおじさんはまたびっくりして、
「遊郭で?」

(……。
ヒロは宿に泊まるといった。それはあたしに「僕はスケベです」ってこっそり教えてるつもりなのか…?)

ヒロの純粋な笑みが脳裏に浮かび、シエルは少し悲しかった。



シエルは頭を垂れてとぼとぼと例の英へ向かった。
周りの雰囲気はすでに違う。

「おい!こっち!」
大きな声に頭を上げると、ヒロが手をふっていた。


シエルはヒロの目の前に立つと、
「楽しかった?ここ遊郭だけど。」
と低いこえで尋ねた。

ヒロはたちまち顔を赤くして辺りを見回した。
「あれ…。ははは。…知らなかったよ。」

(こいつぅ、まさか真の天然?それともしらばっくれたのか?)
シエルが目をギラギラさせてヒロを見た。

「あれ?」
ヒロの格好が違う。

するとヒロはすごく嬉しそうに
「これは、この町のスタイルなんだ。浴衣っていってね。前の服じゃ目立つからこれを借りたんだ。」

ヒロがきているのは青い膝までの浴衣を着ている。

シエルがその浴衣を見つめていると、
「シエルの分もあるんだ!」

ヒロは英のなかから誰かを呼んだ。


「この子かい?」
綺麗な女の人だ。
そして足元には小さな女のこ。

シエルが目を丸くしていると、女の人が
「この子がね、一人で遊んでたらヒロくんが一緒に遊んでくれたのよ。そのお礼。」

「ランナは集中しているみたいだし、2人は帰ってこないから。」
ヒロは眉をハの字にして笑った。

シエルは英を見上げた。
本当にとんでもないでかさだ。
(大人の国だね。)
と苦笑いしながら中に入った。




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あきゅろす。
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