あの木は

「はっ!」
ガバッとヴァンクールは跳ね起きた。

「うわっ!」
ヒロがかなりびっくりした。


「30分くらい寝てたぞ。」壁にもたれながらアシェルが言った。


「うん…。」
ヴァンクールは複雑な心境でうなずいた。

「どうしたんじゃ?」
椎葉がヴァンクールに問いかけた。


ヴァンクールは椎葉を何秒か見つめてから、目をふせた。
「この村にとても大きな木はありませんか?」


すると椎葉はゴホンッと咳き込んでから、

とても真面目な顔になった。


「はい。」


これが何を意味しているのか…。
4人は全くわからなかった。


「行きますかね?」



「ああ。連れていって。」

2人は立ち上がった。


そしてヴァンクール
「アシェル、心配だからついてきて。」
眉毛をハの字にして
本当に心配そうな、いつもはしない珍しい顔をしていた。





「時雨。」

「あ…はい!」
時雨は固くなった。


「ついてきなさい。」
時雨は目を大きく開いて
「わ、わかりました…」







4人は城をあとにした。
前を行く2人にアシェルは

「聞きたいことがあるのですが…」
すると時雨が後ろを向いた。
「なんだ?」


「長い黒髪の青い目の忍びが住んでません?」
すると時雨はポカンとした。

「…椎葉さま。鷺(さぎり)じゃないですか?」
恐る恐る椎葉にたずねた。

すると椎葉が
「鷺だな…。青い瞳なら。
あいつはアストラシアについた者じゃ。」


するとヴァンクールが
「その人が忍びとしてアストラシアで働いてるなら、仕事内容は…」
少し言葉をつまらせてから。
冷たい笑みを浮かべた。
「俺の暗殺か?」


「やはりそうであったか…。ヴァンクールは危険視されておるからのぅ。
なぜ、みなで騎士を倒そうとしないんじゃ…」
椎葉は呆れた顔で言った。

「ああ。その女もヴァンクールを探してるって…」
アシェルは鼻をかきながらいった。


「サラバの野郎…」
ヴァンクールの低い声が響いた。


「サラバ?」
アシェルがヴァンクールにたずねると

「アストラシアのトップだよ。あいつに前に会ったとき、そんなことを言われた。」





「そういや、お前らソルフレアには行くのか?」
いきなり時雨が陽気に聞いてきた。


「なにかあるのか?」
アシェルが目を丸くして聞くと。

「騎士が絶対に出場出来ない闘技大会だよ!
優勝すると。ごっつい賞品がもらえるらしい!
でてみろよ。」

「騎士がでられないなら、考えてもいいかな。」
ヴァンクールは自分の力を試したいようだ。




歩いていると周りの景色が静かになっていた。
村のように人はおらず、木々の木漏れ日が地面を美しく照らしていた。



ここだけは時がゆっくりと動いていた。



「静かだな。」
アシェルはキョロキョロしながら辺りを見回した。


「まぁ、ここは不可侵の神聖な土地だからな。」





「あっ!」
ヴァンクールが指をさした。
3人はそのさきを見ると、

「村?」
また村のような…家がいくつかたっている。


そして向こうの方に周りより一回り、二回り、よりとても高い、木が一本たっていた。




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