光の彼方。


「誰?」

眉をひせめて、アシェルがたずねると。
男性は呆れたみたいに、首をふった。

「お前たちが怪しすぎるから、見てこい。って言われたのー」
そして大きなため息をはいた。


「とにかくだ。
村長に会わないといけないな。」
男性は髪をなびかせ、くるりと背を向けると右手で「ついてこい。」と手招きした。



「大丈夫だ。」
ヒロの言葉をたよりにして、5人は男性についていくことにした。









歩いて5分ほど
目の前にはカストレの城とは違った、城が建っていた。

「うわっ。すげー」
アシェルは両手をつないで、肩にあて、目をキラキラさせていた。


「入れ。」

男性の言葉に5人は黙ってついていった。



城の3階。最上階…


「失礼します。」
そう言って男性は階段の近くにある襖を開けた。
(ガチャッじゃない…)

はじめての光景に驚きつつも、4人に続いてアシェルは入った。





「椎葉さま。この者たちです。」

男性は目の前の老人に頭をさげて5人を前にさしだした。


「時雨(しぐれ)。ご苦労、」

老人は男性を時雨と呼んでから、5人を眺めていった。
どこか全てを見透すような目で、

「カストレの者ではないな。」
ランナ、シエル、アシェル、ヒロ…


「!」
老人はヴァンクールをみたとたん、目をこぼれるくらいに見開いた。


「その髪、…目の色が…?」
ヴァンクールの髪の毛を触ろうとした瞬間。

パシィッ


渇いた音が部屋にこもった。



そして
「触んな!」
ヴァンクールが叫び、
「貴様!この方が誰かわかっているのか!?」
時雨が怒鳴った。


「お主は…。…もしや、エヴァか?」
椎葉は赤くなった手をさすりながら、静かにいった。

「違う。俺はヴァンクールだ。」
ヴァンクールは老人を警戒しつつも答えた。


すると
「おぉ。ヴァンクールか!」
と椎葉は叫ぶ。


みんなはぁ?っていう顔をした。

「どっちだよ。」
アシェルがつっこんだその時。


「うっ!」
ガタンッ!
急にヴァンクールが頭を押さえて倒れた。


「大丈夫!?」
シエルが懸命に叫んだ。


※ヴァンクール視点
ーー

『……い』

『…ンにい…』

俺の頭の中に、声が聞こえる。

(誰?)

静かに目を開けると
庭だった。
池があって、縁側があって、今のミカミのような…


木々の間から光が射し込んで、

とても大きな木がみえる、太さは直径2mくらいだろうか。


『ヴァン!』
木の根元から誰かが俺を呼んでいる。

…でもからだが動かない。


呼んでいる人物を見ようとしても、本当に眩しくて…

『ヴァン!おいで。』
優しい声だ。
ーなのに男か女かわからない。


『うん!』


それに答える、もう一人の声、


その時、
俺の体を何かが通り抜けた。


(あっ。)
一瞬、俺の中の時間が止まった。


眩しい、光の彼方へ向かうのは、同じくらいまばゆい燃えるような赤い髪。
ーあれは…。


『お兄ちゃん。』



ここは、俺の…








目の前が眩しすぎて俺は目を閉じた。



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