アシェルの力

コツコツ
暗い階段を降りる音。


そして、
ギィー…
重い扉を開ける音。

急に明るくなった。
大きな会議部屋。真ん中に大きな机があって、椅子が回りにたくさんおいてある。
「お帰りー。」
少年の声。

「あれ?ウェルはー?」
少女の声。

「ウェルは今、医務室で治療を受けています。」
クレスタは肩を落とした。

「そんなにつよかったのか?」
メガネのおじさん。
―アルヴァが言った。

「いいえ。ウェルは私を庇って…」
クレスタは下を向いて、ボソッと言った。

「ふーん。もういっそのこと2人を離れさせた方がいいんじゃないの?」
先ほどの少女、イクサだ。


「いや、ダメだよ。
ウェルの願いが、スラムをカストレの一部にすること、クレスタの願いが、2人でいることだろう?
それは守ってあげたいよ。」



「まあ、そうだな。
今回も失敗したわけだ。
早くしないと、セイカが力を得てしまうぞ。」
アルヴァは低く唸った。


「私は失敗したわけじゃないよ!」
イクサが大きな声、かつ焦った声でいった。


「まあ、セイカの願いはよくわからない。彼女はカストレをトップにたたせる。と言っているけど、本当にそうなのかな。最終的に姫様や王様、王妃様を殺して自分がトップにたったりしそうなんだ。」
先ほどの少年が言う。


「そうだな。
じやあ、次は俺が行くよー」
陽気な男の声。

するとイクサが
「一人はだめよ。
ナトリさん。あなたもついて行ってあげてよ。」
ナトリと呼ばれたタバコを加えた女は
「フー…」
と煙をはいた。


「あたしが?戦闘には向いてないよ。」


「その為のオリバーでしょ。」
イクサが陽気に言った。


陽気な男。オリバーはニコッと笑ってガッツポーズをした。








―――――――――――――――



アシェルは腰に左手を当てて、右手にお玉をかまえて、鍋を凝視していた。


「はっ!」
勢いよくお玉ですくう。

フーフーッ
少し冷ましてから

パクッ。

「っー…!」





アシェルの目が輝いた。

(今までの最高の出来!)
『僕も食べたかったよー』


フレイルがとても残念そうに呟いた。
(ごめんな。)

アシェルはそういってから、ガチャガチャとお茶碗を5つ取り出して、素早くカニ雑炊を盛り付けた。



まずは手っ取り早く、操縦室にいるランナとヒロのところに向かう。

ガチャッ

「あっ。アシェル兄ちゃん。どうしたの?」
ランナが振り向いた。

「とてもいい匂いですね。
…それですか?」
ヒロが目をつむって匂う動作をしたあと、お茶碗を指さした。


「そうだ。腹へっただろ?
熱いうちにな、ここに置いとくから。」



カチャッとお茶碗を入り口近くの机において、アシェルは部屋をでた。



またキッチンに戻って、お茶碗3つを持った。



トントン。
「入れよ」
ヴァンクールの声。

ガチャ。
「ご飯出来たぞー。」

その言葉にシエルが起き上がって、目を輝かせた。

「いい匂い!」
アシェルはベッドに近づいて2人に渡す。





「「美味しい!」」
2人は同時に叫んだ。

アシェルは嬉しそうににっこり笑った。
「よかったー。」



「傷は…?」
アシェルが聞くと

「ランナはすごいよ!
かなり良くなってるよ」



「薬だなに補充しておいてくれたんだ。」
<以前、ヴァンクールが怪我をしたときに色々なかったものだから。>


「そうだ。ヴァンからきいたよ。」
アシェルは首をかしげた。

「あれは魂を浄化しているようだった。」
…アシェルは少し考えた。

「なんか、俺のいつもの力とおんなじような感じだった。」

ヴァンクールは指を顎にあて、考えるポーズをとって、
「人の魂を元ある場所へかえしたのか?
消すんじゃなくて…かえす力…?」
無理矢理な考えだ
ますますわからなくなった。


しかし
全員は言葉を失った。




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あきゅろす。
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