守りたい。


「しまった!」
ヒロはよろけているので避けることができない。

割れた地面を見ると、でかいハエトリソウみたいのが口を開けて待っている。


ヒロは目をつぶった。
(もう一度だけ…)

―シュンッ
クレスタは血を拭いながら目を丸くした。
「消えた!?」


そう。
ヒロは空間の力を使った。

「はぁ、はぁ、」
燃費が相当悪いこの力はかなり疲れる。


ヒロはクレスタが登場した樹の切り株に座っていた。


頬を押さえたクレスタがバッとヒロを見る、
「瞬間移動…?」


そう言った直後にクレスタはまた右手をつきだした。


切り株からまた芽が出た。

ヒロはびっくりしてそれをよける、しかし右足を捕まれた。

ドンッ
「っ!」
その瞬間ヒロは地面に叩きつけられた。


足を引きずられる。
刀を懸命にふるが、あと数cm届かない。


ふと切り株を見るとまた樹ができて、クレスタは樹の枝の上に座っていた。

「可哀想だけどこのまま樹の一部になって…。」


コツコツ。
足音がする。
クレスタの樹の後ろ側、
電車の方から

ヒロは首をひねった。


親指をなめながら、
(最悪だ)
ウェルテスが歩いてきた。


「こっちは終わった。」
左手をクレスタにむかって振った。


クレスタは低めの樹の枝に足をひっかけて、くるりと鉄棒のコウモリをした。

「ウェル!」
声が嬉しそうだ。



ーしかしその瞬間、
「クレスタ!」
ウェルテスの顔が変わった。

ウェルテスの視線はクレスタの向こう、そしてヒロよりも向こうを見ていた。
そしてウェルテスが走り出す。



クレスタが後ろを振り替えると…
「あ…。」
赤い髪、ヴァンクールだ


右手にはバタフライナイフ。


ヴァンクールの丁度よい高さ、…顔を狙っている。

ヒロからはヴァンクールの顔がよく見えない。
クレスタが相当脅えていることからものすごい顔をしているのだろう。


クレスタの腫れた顔の前でバタフライナイフが振り上げられた。
「…ッッ!」


声が出ない。怖い。
(ウェル…!助けて…)


ザクッ。

ピピッとヴァンクールの顔に血がついた。


そしてヴァンクールはナイフを勢いよくぬいた。



「ウェル…。」
クレスタの前でウェルテスは両手を広げて立っていた。
右の腹には血が溢れていた。
「くぅ…!!」
ウェルテスが顔をしかめた瞬間、ヴァンクールははっとした。
ウェルテスが右足を後ろにひいたからだ。

ヴァンクールは後ろにとんだがウェルテスの蹴りがかすってしまった。

それだけでヴァンクールの華奢な身体はかなり遠くまでふきとんだ。


「チィッ…!」
ヴァンクールは空中で受け身をとりながら舌打ちした。





クレスタは能力を解いたのか、ヒロの体を引っ張っていた力はなくなった。

「ウェル!」
クレスタは樹から降りてウェルテスの倒れそうな体を支えた。


「はぁはぁ…
大丈夫だから、」
きずたらけの右手をクレスタに向ける。

「大丈夫じゃないよぉ
帰ろう。」
クレスタが左手を前にだした。空間が裂けた。


ヴァンクールははっとした。
(イクサの時と同じ!!)

追いかけようとしたが、うまく足が動かない。
「待て!」


と同時にランナはメスを投げたが、

カンッ
そのメスは空を切って、ホームの壁にあたっただけだった。


また逃げられた…


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