クレスタ


「ヴァンを頼む。」
そう言ってヒロはヴァンクールを肩から降ろした。

「うん。」
ランナはヴァンクールにぴったりくっついた。






「わ、私の相手をするの?」
クレスタは少しびびっているような気もする。


ヒロも汗をかいていた。

ヒロは肩にかけていた刀、「霞」を外して
―シャンッ
と鞘から引き抜く。


紫色の刀身が煌めいた。

「綺麗…。」
クレスタが目を丸くして刀を見ていた。

ヒロは鞘をベルトにひっかけてからクレスタを見た。

ークレスタがいっこうに動かない。
(俺から来い。ってことか?)


ヒロは前に構えていた刀を右後ろに構え直す。

この刀は初めて使う。


ヒロはクレスタに向かって走った。


クレスタは眉間にシワを寄せて両手を前に差し出す。

するとヒロにむけて、手から植物のつるがすごい勢いで伸びた。

つるは凶器となっていた。

(当たったらひとたまりもないよな。)
ヒロは刀を振りながらつるを丁寧に絶ちきっていった。

クレスタまでもう少し!
というところで、
「兄ちゃん!避けろ!」
というランナの声、


正面にはなにも気配がないことからして、
「後ろか!」



走りながら後ろを向きつつ、刀を振り上げると
ビュッ


すごい数の何かが飛んできた。
ヒロは右に大きく跳躍してかわす。


それが何か、というと…

(矢…か?)
ホームの天井をちらっと見ると樹の枝が弓なりにうねっていた。


ヒロは着地の瞬間に方向転換して、
その勢いでクレスタに直進した。


クレスタも両手に葉っぱの剣?
を装備してヒロの方へ走ってきた。


ガキィンッ
刃と刃がぶつかりあう音、

ギチギチィ

「これはすすきの葉。
なかなか切れ味がよくて…」

クレスタは汗をかきながら荒い息でいった。

女のくせにすごい力だ。

ヒロも両手で刀を握らないと支えられない。

(このままじゃラチがあかないな。)

押しかえされるのを承知でヒロは左手をするすると刀のつかのさきにスライドさせる。
運の良いことに、それにクレスタは気づかなかった。力いっぱい押してくる。

クレスタが最大に力を入れた直後が、力の小さくなる瞬間。

(今だ!)

その一瞬のうちにヒロは刀から左手を離した。
とほぼ同時にベルトにひっかけてある鞘をつかむ。


ヒロは後ろによろめいた。
クレスタが葉の剣でヒロを斬ろうとする。

バキィ!

わずかに血がとんだ。

葉の剣で斬られる前にヒロが鞘でおもいっきりクレスタの顔を殴ったのだった。


しかしその瞬間ヒロの着地地点が割れた。



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あきゅろす。
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