飛行船でバレンチアへ

とにかく4人はアストラシアの飛行場に向かった。

「アシェル。あの人に飛行船ないか聞いてくれないか?」
ヴァンクールがアシェルの袖をつかんで言った。
「いいけど…自分で言わないの?」
ヴァンクールはなぜか下を向いた。
「ヴァンってば人見知りなのよ!」
シエルはニコニコしながら教える。

「じゃあ行ってやろう!」
アシェルが何故か得意げになって大股で1歩を踏み出した時
ヒロがパタパタと笑顔を浮かべながら走ってきた。

「あれ。ヒロ、どこ行ってたの?」
アシェルが聞くと、
ヒロがアシェルの後ろを指刺した。

ブブブッ…
風をきる鈍い音…
そして懐かしい突風。

「あの飛行船を借りました。」
ヒロがまたにっこり笑った。

(こいつ!わざとやってんのか…?)
ヒロの笑顔がアシェルには悪魔に見えた。

アシェルが悔しそうに唇を噛んでいると、
シエルが
「アシェル元気だしなよ!
ヒロの方が少し要領がいいだけだよ!」
(みんな俺をいじめるのうまいな、)
アシェルは涙が出そうになった。





「おい!早く乗るぞ!」
ヴァンクールがかなり大きな声で叫んでいる。
まあ、突風のせいであまり聞こえないが。



3人は走って飛行船に乗り込んだ。


「バレンチアの飛行船に向かえばいいですね。」
中の運転手に聞かれて、アシェルはうなずいた。


ゆっくり飛行船が浮上した。
浮遊感がおそう。


ヴァンクールはまた落ち着かなそうに窓の外を眺めていた。



「ヴァン…」
物陰でアシェルとシエルはヴァンクールの方を見ていた。

「大丈夫かな…」
シエルは呟いた。
「あたしもかなり心配だけど、ヴァンの方が長いから…」
アシェルはシエルの方を見ていたがヴァンクールに目を向けた。

「あっ。ヴァンクールの親はバレンチアにいるのか?」
シエルに思い付いたことを聞いた。

「ヴァンにはいないよ。それだけしかわからないけど。」
「じゃあアルフさんとフェアリーさんがあいつの親みたいなもんか…」
するとシエルはうなずいて
「あの2人はバレンチアみんなの親なんだ。」
シエルが少し泣いてるようにみえた。
(無事なのかな、)
『…。そう考えるのは無茶かな、あの2人はバレンチアの代表だから。』
フレイルもかなり元気がない。



その時
「もう少しでバレンチアですよ。」
放送がなる。

少し経ってからヴァンクールが
「あ…。」
と無意識の言葉をもらした。


ヒロも加わって3人が窓にへばりつく。


そこにはバレンチアが浮かんでいたところに巨大な木がはえていた。
バレンチアまではまだまだ遠いのに。

巨大、なんてものじゃない。例えてみればカストレくらい。


「なんだあれ…」

ヴァンクールの言葉には絶望みたいなのが含まれているような気がした。


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あきゅろす。
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