静かな終わり

イクサが消えたあと
シエルは座りこんだ。
「逃がしちゃった。」
ヴァンクールは右足を引きずりながら
「しょうがないさ。
今の俺たちはきっと勝てなかった。」

シエルはぎゅっと膝の上で拳を握って
「あたしがイクサを倒すから。」
静かに呟いた。


体育館ではアシェルが松本杏理をつれて戻って来ていた。

変形した扉をアシェルがおもいっきり蹴るとドアが外れた。


能力者が全員死んだという旨を伝える。

喜びの声のなかに時々混ざって聞こえる嗚咽…
アシェルもヒロも松本杏理も心が痛かった。



その頃異変に気づいた警官がようやく来ていた。


ヴァンクールとシエルは怪我でまず入院することに、杏里は精神的なもので入院することになった。


事件の内容は
城戸亮、中畑緑、中村晴輝の3人の全校生徒を巻き込む"無理心中"
犠牲者…校長、ヤンキー3人、そして加害者3人。



納得いかない松本杏理はずっと「孤児院がなくなったから」と言っていた。


今病室には3人。
アシェルとヒロはいない。

松本杏理の隣のベッドのヴァンクールは形のいい眉毛を寄せて
「何言ってんだ?」
松本杏理はうつむいて
「私の父がこの国のリーダーなんです。
実はあの3人は全員孤児院育ちで私の父が孤児院を閉鎖してしまったからあの3人がもう一度復活させようとしていたのです。」
ヴァンクールは目を伏せて、んー。と言ってから
「そこで騎士になれば発言力がもらえるから…
って魂胆か」

「私が父によくいっていれば…」
するとヴァンクールが急に低い声になった。

「あいつらはバカだ。
人を殺して地位を得るなんて無理に決まってる。
甘えてる。」
松本杏理は下を向いた。

「ま。俺もやったら倍にしてやりかえす精神の最低な奴だけどな。」
ヴァンクールはベッドに潜った。

するとヴァンクールの隣のシエルが「あっ!」と小さく叫んだ。
ヴァンクールが顔を向けると
「バレンチアに連絡しなきゃ。」
怪我をしたことなどを伝えないと。

シエルは院内で電話した。
耳に電話を当てながらシエルは首をかしげた。
「ヴァン。繋がらない…」
おかしいな。
メインモニターの前に人がいないわけない。

「俺たちの飛行船は?」
シエルが行きしな乗ってきた飛行船に連絡する。

「でないよ。
あたしら帰れないじゃん」

シエルは少し心配そうに言った。

「ああ。なんかあったのかも…」
ヴァンクールはすごくドキドキしていた。


通信ができないなんて初めてのことだったから。



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