中畑緑

アシェルが2人を見失ってから少し時間がたっていた。


(っとに!どこなんだ!?)
イライラしていた。

見えないのは本当につらい。

『アシェル!耳をすますんだ!』
そんなこと言ったって無理がある。



その時、



ドカンッ

地面が揺れた。
(…っ!)



(この揺れ。
半端じゃないぞ)
アシェルの額から汗が流れ落ちた。


ヒロか?松本杏理か?中畑緑か?
被害者が気になった。



その時
「キャー!
緑やめて!」
松本杏理の声。

図書室の方だ。
走っていくと、中畑緑が拳を振り上げていた。


「やめろ!」


中畑緑の腕を掴むことに成功した。

あたりを見回すと本がすかすか?になっていた。



「離せー!」
中畑緑は泣き出した。

アシェルはたとえ敵でも少し戸惑ってしまった。

「離せ!離せ!離せー」
泣きながらもう片方の腕でアシェルの胸を叩く。


すると松本杏理が
「アシェルさん…
緑はもう負けを認めています。」


中畑緑は
「もう終わりだ!
他の2人は死んだんだろ」

なんでこんなに泣いているのかわからなかった。

こいつらは友達を騙してまで殺そうとする最低な奴らと思っているから。


すると中畑緑が静かになった。

「あっ!」
思いっきり腕を引き抜いたのだ。

不意のうちに掴んでいた腕を引き離されてしまった。


「もう後には戻れない。
杏理…。私は強ければ騎士が迎えに来てくれる。と思ってたの。」

静かに泣きながら中畑緑は図書室の奥へと歩いていく。

松本杏理は焦って追いかけようとしたが、アシェルはとめた。

「逃げちゃうんじゃ!?」

アシェルは首を左右にふった。
中畑緑が逃げるようには見えなかった。


中畑緑は貸し出し口の机にもたれかかった。

そして笑った。
「私たちはここまでして何をしたかったんだろう。
結局迎えに来たのは私たちの天使じゃなくて、悪魔だった。

落とし前つけないと。」




中畑緑はペン立てのハサミを掴んだ。
松本杏理はわけが分からずあたふたした。

アシェルは静かに言った。
「目をつぶれ」
松本杏理が涙をためて目を見開いてアシェルを見た。

「目をつぶれ!」

中畑緑はハサミを自らの喉元に当てた。

その時アシェルが松本杏理を無理矢理掴んで目を手で覆う。

「待って!緑!待って!
ごめんなさい!お父さんに話してみるから!」



目を覆われたまま松本杏理は意味のわからないことを叫んだ。


中畑緑は静かに泣きながら
「杏理は全然悪くない。」


ハサミが喉を貫いた。

「あぁー!」
松本杏理が泣き叫ぶ。


アシェルは細い目をしてその光景を見ていた。


(気に入らない。
人を殺しておいて、逃げるなんて。

気に入らない…)





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あきゅろす。
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