ヴァンクールと晴輝


ざわざわ

と風が吹いた。
と思った、
ビュー
という音は風の音だ。
と思った。


しかし木々は少し揺れているだけだ。

その時、
風の音が少し大きくなったと思うと
図書室の割れた窓からすごい量の白いものが飛び出してきた。


「紙…」
ヴァンクールがその量に驚いているうちに、足は大量の紙の影の中に入っていた。

(図書室の紙、全部かよ。)
まるで波のように襲ってきた紙の波をヴァンクールは後ろにジャンプしてかろうじて避けた。


しかし晴輝が両手を動かすだけで、まるで生き物のように紙が追ってくる。

「チッ!」
今はヴァンクールは逃げるだけになった。


自分の左側にとんできた紙をヴァンクールはバタフライナイフで切り落とす。

(キリがないな)
そう思った時、
右肩と右の腰に鋭い衝撃がはしった。
左手で肩を押さえると。
温かい水。
…血がでている。

ヴァンクールは少し嫌な顔をして右目の眼帯をむしりとる。

そして、晴輝に向かってニヤリと笑いかけた。


「その目をやめろ!」
晴輝は眉間にシワを寄せて両手を上げた。
そのまま
「マリの敵だ!」
両手を前につきだした。

すべての鋭い紙がヴァンクールめがけて、音もなくとんでいく



晴輝にはヴァンクールの目の色が変わったように見えた。

ヴァンクールに当たっている紙はヴァンクールに吸い込まれるように消えている。

「紙が…消えている?」
するとヴァンクールが晴輝が瞬きをする間に目の前から消えた。



「違うよ…
俺に当たる前に溶けてなくなるんだ。」
晴輝の耳元でヴァンクールの低い声が囁かれた。



晴輝の喉元にはナイフが添えてある。


チェックメイト。



[*前へ][次へ#]

20/26ページ


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!