スラムの乱闘へ
「なんで!あの男と!あんたわざとでしょ。」
シエルはズカズカとエージェントに近づくと目の前で大声をあげた。
「なんだよわざとって。ウェルがスラム出身だからに決まってるだろ。あんたらに何かあったとか僕は知らないよ。」
エージェントは腕を組みながら身長の差がさほどない少女を見下した。シエルもエージェントを目一杯睨み付けると、ランスやエージェントに背を向けて謁見の間から立ち去った。

『シエル何しにスラムに行くの。あのシエルが眠ってからあなたおかしかったけど。』
「あたし色々思い出したの。あの夢でスラムで会ったこと色々思い出したの。」
シエルは誰もいない廊下を進みながら、となりのシャインの目をみずに話した。
(シエルってば、あれから遠くを見てることがおおくなったな。)
『あんな過去、消したい記憶じゃないの。』
シエルは急に立ち止まった。
「あたしたちあそこに置いてきたものがあるんだよ。それを見つけたら何か変わる気がする。」
『わたしたち……』


トントンッ
「誰。」
翌朝、いうよりもまだ外は暗い。シエルは眠い目を擦りながら扉を開いた。
目の前には真っ黒の巨体が立っていた。
「よっ。」
暗くてよく見えないが、聞き覚えのある声だ。しかし以前のように殺意のこもった声ではない。柔らかい、いつもヴァンクールが話しかけてくれるような声色だ。
「ウェルテス……」
「スラムはいつも夜だけどな。
今下から連絡があって、またスラムで乱闘だ。いまからウェネス・アレグリアが出動するみたいだから、一緒に出るぞ。」
シエルは自分がどんな顔をしているかはわからなかった。ただウェルテスが少し気を遣ってくれているのをみて、優しい顔ではないことはわかった。無言で部屋に戻り、ぐっすり寝ているカレンを起こさないように少しの荷物を持った。

「シエルちゃん。すきあらば切りかかってもいいからな。」
バレンチアを墜としたことを後悔しているのはよくわかるが、こんな善人面をされるのは困る。
「なんなのあんた。そんなのわかってるわよ。」
あたしが悪人みたいじゃない。

ウェルテスとシエルは暗い牢屋の前を通り、スラムへとつながる隠されたエレベーターの前で止まった。
「すでにスラムでは戦いが始まってるから。戦いを制しつつ、やりたいことをやってくれ。」
エレベーターの扉が開いた。

[*前へ]

4/4ページ


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!