考え
戦闘機はあっという間にカストレに帰還した。
「みなさんお疲れさまでした。」
エースは凍った空気を溶かすように、明るく背後に目をやると、全員が無言で機体から降りる。ヴァンクールも珍しく起きており、額を押さえ、調子が悪そうだ。
「ヴァンクール頭痛か。」
アシェルは念のため額をヴァンクールにつけた。
『大丈夫。エヴァの反応はないよ。』
フレイルの言葉で安心したアシェルはため息。
「ただの頭痛だ。」
ヴァンクールはフラフラとカストレの城につながるエレベーターに向かった。
「わたしは機体の整備を行いますので、皆様は先にお戻りくださいませ。お疲れさまでした。」
すでにジャケットを脱ぎ、工具の箱を抱えたエースは微笑みながら敬礼をした。
「連れてってくれてありがとう。」
シエルは真顔で敬礼をして、フラフラのヴァンクールを追う。アシェルたちがエレベーターに乗った時、キセキとミンティアの姿はなかった。

「戻ったか。」
いつも通り牢屋がならぶ暗がりでエレベーターから降りると、国王ランスが腕を組んで立っている。
「やはりカレン。」
ランスは少し心配そうな表情でカレンを見つめる。
「王。私は大丈夫です。」
カレンはランスに微笑んだ。
「おや、ヴァンクール大丈夫か。」
ランスはフラフラのヴァンクールの両肩を支え、ヴァンクールの瞳を覗き込む。
「大丈夫。」
「君は部屋で休んでおいで。三人は謁見の間に来てくれないか。」

謁見の間にはエージェントとアルヴァ、そして少し距離を開けていつものカサハラ高校の制服ではなく、煌びやかなランスの衣装に似た、騎士の衣装に身を包んだヒロが待っていた。ただヒロの衣装はランスのように白ではなく黒を基調としている。
「みんなお帰り!」
ヒロが異様な空気の謁見の間に耐えられない様子でアシェルたちの方へ走り出す。
「ヒロ似合ってるじゃない!」
シエルがヒロに抱きつくとヒロはいつも通り眉を下げて困ったように微笑んだ。
「ヴァンクールは部屋?」
エージェントがゆっくりとこちらに歩み寄って来る。ランスは無表情でエージェントの言葉を聞いていた。
「フェリーチェはカレンに力を託したんだね。」
エージェントは音もなくカレンにゆっくり近づき、瞳を覗き込むと、カレンの瞳はそれに応えるようにエメラルドグリーンに煌めいた。
「これであとは最後の力だ。これでセイカに勝てる。」
エージェントはカレンから目を離すと、アシェル、シエル、ヒロに目をやった。
「ただセイカとの戦闘になった場合、いまのおまえたちでは確実に勝てない。あと一週間期間がある。」
その瞬間シエルが大きな大きな声をだした。
「エージェント。修行も大切だけど、私行きたいところがあるの。」
エージェントは目を細めてシエルに目をやる。
「いいけど、騎士をつけてってくれないかな。」
シエルは目を細めてから、
「仕方ない。私が決めてもいいの?」
エージェントはニッコリといやな笑い方をすると、
「ウェルテスだ。」
とシエルの頭にポンと手を置いた。
シエルの全身に悪寒が走った。



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