無音の戦闘機
無音で飛び続けるカストレ最新の戦闘機では、誰も言葉を発しなかった。アシェル、カレンそしてシエルは静かに外を眺めており、ヴァンクールは眠っていた。キセキとミンティアは奥の作業机で大きな地図とコンパスを睨みつけながら何やら話をしている。
名前どうり失われた園となったロストエデンが完全に見えなくなったころ、エースの耳にカストレからの無線が届いたのか、何やら話を始めた。
「こちらエース。さきほどロストエデンを離れ、カストレに帰還途中です。」
結果は後で聞くのか、そこでエースの会話は終了した。

「アシェル。何があったか聞かないの。」
カレンは窓の外を眺めるアシェルに問いかける。
アシェルはカレンに目をやった。一定の期間でカレンの瞳はエメラルドグリーンに輝く。何かあったのは確実だった。
「カレンが無事でよかった。」
アシェルはただ一言カレンに告げる。カレンは少し恥ずかしそうに頬を染めると、小さく頷いた。
『アシェル。カレンだけど、フェリーチェの創造の力を宿してる。心刀ではないから、フェリーチェは死んだとみていい。』
カレンの様子を見ながらフレイルが小さく呟いた。
(お前の力すごいのな。セイカはこのこと知ってるのか。)
アシェルはカストレの黒い塔をぼうっと眺めながらフレイルの発言に応える。フレイルはんー。と言葉を詰まらせる。
『あくまで想像だけど、あのロストエデンであった化け物いるでしょ。あいつを作ったのがティアラ博士みたいなんだ。彼女が彼をフェリーチェの監視としてロストエデン周辺に配置していたのならばもうバレているよね。』
どっちにしろセイカにはバレるのだ。アシェルは小さくため息をつくと、あと一つの四大能力について考えた。
(時間の問題なんだよな。セイカが俺たちに攻撃を仕掛けてくる前に最後の力を手に入れたい。)
するとフレイルが困ったような顔をして微笑んだ。
『僕が心配しているのは、最後の力が僕たちの中の誰かを選ぶのかってことなんだよ。最後の力は破壊の力。能力は能力自体が人を選んで寄生している。』
アシェルはフレイルの言いたいことがすぐわかった。
(つまり全てを破壊する力が、平和を望む俺たちに力をかすかって話だろ。)
フレイルは窓の外を眺めている。
『セイカを倒そう。』
アシェルは久々にこの感覚を味わった。ヴァンクールだ。セイカと契約してからなぜか、意識の会話ができるようになった。アシェルはちらっとヴァンクールを見ると、起きてはいるようだが、ぐったりと座席で横になっていた。
(ヴァンクール。)
『相当ダメージくらってる時にアシェルの声だけ聞こえるんだ。』
ヴァンクールはフーフーと小さく息を吐きながら口元だけあげた。
それは太陽と月が共鳴しているのか、アシェルには分からなかった。寝てしまったのか、その後ヴァンクールから意識の会話はなかった。

戦闘機は揺れず、無音で黒い塔を目指す。


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あきゅろす。
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