守るべきもののため
「シャイン!」
シエルはハッと目を覚ました。あたりは真っ青で、驚いた顔のアシェルと、不安そうに近づいてくるヴァンクールを見て、自身がロストエデンで夢を見ていたことにようやく気がついた。
「シエル。大丈夫か。」
ヴァンクールはシエルの体を起こしながら心配そうに顔を覗き込む。シエルは大量の汗をかき、なぜかポロポロと涙を流していた。
「大丈夫。大丈夫よ......」
シエルは辺りをキョロキョロしながら、ゆっくりと立ち上がる。
「シャイン。あなたそんなところにいたのね。すぐに迎えに行く。」
ずっとシャインはイクサに銃殺されたのだと思っていた。シエルが思っていた何倍もシャインは辛い死に方をしていたのだ。
『シエル。私はここにいるよ。』
シエルはシャインの声にハッとした。シャインが横で心配そうにシエルを見つめていた。美しい金髪が青を吸収している。

「シエル。無理するなよ。」
ヴァンクールは目を伏せながらシエルの横を通り過ぎる。シエルもヴァンクールを目線で追った。
その先では、フェリーチェがカレンを膝枕していた。カレンはまだ眠っている。フェリーチェは目をつむったまま、カレンの頭を撫でた。
「シエル。あなたは大丈夫。私の力なんてなくても十分強い。シャインはまだ半分眠っている。シャインの記憶全てを見つけてあげてください。」
フェリーチェはシャインに微笑みかける。
『なんなの?どういう意味。』
シャインが不安そうにフェリーチェに問いかける。
「シエル。あなたにはわかりますね。」
「わかる。」
なぜかシャインが自分の死はイクサによるものだと昔から思っていたことだ。そしてシエルは自分がしなければいけないことを十分理解していた。

「わたしは心優しいカレンを選びます。カレンは今も心の中で守りたいものを守ろうとしています。」
フェリーチェはうっすらと汗をかいた美しいカレンの顔を撫でた。

「カレンは大丈夫なのか。」
アシェルは部屋の壁にもたれながら、不安そうにフェリーチェに問いかける。その時
「ウオオオオオオオオ!」
女性の悲鳴と、男の唸り声が混じったような音が王国内にこだました。
そして直後、アシェルの頭の中にフレイルが目の前で殺される瞬間や、父親が心刀になった日の情景が映った。
「くそ!またか!」
そうブレイブブルーの怪物である。一瞬で風とともに広間の中央に現れ、血まみれの顔はニヤリと笑った。

「本当に行儀が悪いですね。あなたたち、少しの間ロズから私たちを守ってください。」


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あきゅろす。
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