地上へ
「シエル走って!」
シエルとシャインは区画Aの路地を走っていた。

ウォルケニア......あの男の手でロジータおばさんは殺された。閉店準備をして店のシャッターを降ろそうとしたときに、突然銃弾の嵐が酒場ロジエータを襲ったのである。
ロジータはシエルとシャインを抱きかかえ店の中へ走ったが、銃弾は容赦なくロジータの体を貫いた。
「シエル。シャイン。奥のショットガンを持ってお行き。」
ロジータは虫の息でカウンターの裏にかかったポンプアクション型の小さめのショットガンをシャインに渡すとそのまま息を引き取った。

「どこかなー子猫ちゃん。」
気持ち悪いウォルケニアの声がカウンター越しに聞こえる。シエルとシャインにはロジータの死を悲しむ時間などなかった。
「シエル。風でこの場を切りぬけよう。」
シャインはショットガンの弾を数えながら、カウンターからウォルケニアを狙う。
「わかった。」
シエルは店の角の机に乗ったビンに風をまとわせると、そのまま地面にビンを落とした。
パリーン
ビンは粉々になって砕けた。と同時にウォルケニアたちはそちらに銃を構えた。
「シエル!逃げるよ!」
シャインはシエルの手を引いて店の入り口に走る。
ドンッドンッドンッ
とシャインはウォルケニアたちにショットガンを放つが、ウォルケニアは仲間という盾に守られ無傷である。

シエルとシャインはただひたすら区画Aをスラムの中心に向かって走った。
「シエル!スラムを出るよ!」
シャインはシエルの手を引きながら叫んだ。
(あの控えめのシャインが言うと全て現実になるような気がする。)

スラムの中心にはスラムから地上の世界へと繋がるエレベーターがあると聞いていた。抜け出した者も何人かいる。それはいつもスラムで何かしら大きな暴動が起きた時だ。地上の世界から騎士と呼ばれる人物が降りてきて暴動を止めるのである。
ウォルケニアたちを撒き、エレベーターの前にいるいつもより少ない見張りを倒し、シエルとシャインは意外と細いエレベーターのボタンを押した。
「早く!」
「行かせないよ。ようやく君たちは僕の物になるんだから。」
背後にはウォルケニアたち二十人程度が立っていた。
シャインはショットガンを見てからため息をつくと、ショットガンを地面に置き、手を挙げた。シエルもそれに続いて手を挙げた。

ウォルケニアの隣の大男がジリジリと拳銃を構えながら近づいてくる。そしてシエルの前に立ち手を広げた。
その時
チーン
背後のエレベーターが開いた。
と思った瞬間、シエルの前の大男が後ろに吹き飛んだのである。
シエルは咄嗟にエレベーターの入口横に隠れた。シャインはショットガンを拾い、目線は後ろに、ショットガンは前のウォルケニアに向かって構えた。

「今日は何があったの。」
エレベーターから出てきたのはシエルたちと年の変わらないピンクの髪の少女だった。
「騎士......!」
シャインはショットガンを少女に構えた。


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