招かれざる客
酒場にくるものは常連と、弱いよそ者ばかりではない。
一番厄介なのが、ルールを知らない強い者である。

ー(この男は。)
肩に大きなベルトをかけた茶色のシャツを着た髭の生えた痩せた男がシャインに話しかけている。
年は40前後だろうか、シエルはこの男をよく覚えていた。
(そうか。この日は。)
シエルとシャインの運命を大きく変えた日だ。ー

「ねえ。君はいつからここにいるんだい?」
男はニコニコしながらシャインに話しかけた。
「今忙しいので。」
シャインは一度男を見てから、また目線を前に戻し歩き出した。
男は少し驚いた顔をしてからまたニコニコ笑って、仲間数十人と酒を飲んだ。
男はシャインが前を通るたびに話しかける。
最初は簡単な質問だった。シャインは無視を続ける。質問はどんどんとエスカレートしていった。
「君は男とヤッたことがあるかい。」
男はニコニコしながらシャインに話しかけた。シャインは少し眉間にシワを寄せて酒を机に叩きつけてカウンターに戻った。

「彼女は真っ白だ。」
男はニコニコと笑った。

シャインはカウンターに戻ると空になった酒瓶をカウンターの下の瓶入れに突っ込んだ。
「シャイン大丈夫かい?」
ロジータが心配そうにシャインの方を見た。そして客たちに目を向けるとシャインに話しかけていた男が真顔でこちらを見ている。
「あいつかい。初めて見る顔だね。シエルも気をつけなよ。あまり口をきかないように。」
横で皿を洗っていたシエルは「はあい」と返事をして男の方を見た。
男はシエルに気がつくと一瞬で微笑む。
「なにあいつ気持ち悪い」
「なに心配ないよ。私が守ってあげるから。」
ロジータはシエルに微笑んでから男を睨みつけた。

男もロジータを睨みつけた。
「あのババア邪魔だなあ。」

ーこの男の登場により、シエルとシャインの運命は全く別の方向に進むことにことになる。

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