酒場ロジエータ

酒場ロジエータの中はかなり広いが、ほとんど満席でおよそ50人程度の客が大声をあげて酒を飲んでいた。
「いらっしゃいいらっしゃい!」
シエルは両手にお盆を持って長い髪をなびかせながら小走りで店内を駆け回っていた。
「嬢ちゃんもっともってこい!」
一人の男性がシエルを大声で呼び止めた。
「はいはいー!」
シエルは他の客のテーブルに持っていた酒をドンッと置くと、また小走りで店の奥へ向かった。
「ロジータおばさん!5本追加よ!」
店の奥でせっせとたくましい腕で棚から酒を下ろしているのはこの酒場の店主の銀の短髪が美しいロジータである。
「おまえら金はあるんだろうね!」
ロジータが大声をあげると「おー!」っと一部の客が大声をあげた。

シエルはロジータから追加の酒を受け取ると、また先ほどの客の方へ走った。その時、
「おいてめえいい加減にしろよ!ぶっ殺されてえのか!」
突如店の端から男の怒号が響いた。しかし周りの人々は驚くことなく引き続き酒を飲んでいる。
シエルがそちらをちらりと確認すると、いつものように違うグループの男たちがにらみ合っていた。
シエルは無視して客の方へ向かう。基本客同士の喧嘩には入らない。

「お待ちどうさま」
シエルが先ほどの客に酒を渡した直後、ガチャリという音で店内は静まり返った。
喧嘩していた男たちの一人が銃を抜いたのだ。銃を抜いた男は今にも発砲しそうなくらい気が立っているのが見て取れる。

「ロジエータでは武器の持ち込みは禁止だよ。」
小さいのによく通る声が店内に響いた。店の奥から出てきたのは長いツインテールの少女シャインだ。シャインはゆっくりと二人の間に入った。頭に血が上った男は声の主であるシャインに銃口を向ける。ここの人間は本当に耐えることができない。すぐに殴りすぐに殺す。この男は間違いなく相手の男や、目の前のシャインを殺そうとしている。
「うるせえぞガキ。」
男はシャインの頭に銃を突きつけた。
「こっちのセリフだよ。この店は初めてなんだね。」
シャインは全く怖気付くことなく男の顔を見つめている。
「あ?知らねーよ。どけよくそガキ。これは俺とこいつの問題なんだよ。まずはおまえが死ねや。」
男はシャインの頭に銃をぴったりとつけた。そしてゆっくりと引き金に指をかける。
「ほんと馬鹿ね。」
シャインが笑った瞬間、男の頭が吹き飛んだ。
「ほんと馬鹿だねえ。」
男の横にはタバコをくわえ、片手でショットガンを持ったロジータがいた。ロジータは頭が吹き飛びピクピクと痙攣した男の体を付近で震える男たち向かって蹴り飛ばした。
「おい。あんたらこいつの仲間だろ?こうなりたくなかったらこいつの死体片付けて帰ってくれないか。」
ロジータはタバコをフーッと吹いて、ショットガンを男たちにむけた。

彼女が一人で酒場を運営できている理由がわかる。この酒場の常連はロジータの恐ろしさを知っているため、あまり騒動が起きないのである。

[*前へ][次へ#]

26/33ページ


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!