魔層攻防戦

アシェルなんか好きじゃなかった。

カレンはゆっくり目をさます。そこには懐かしい景色が広がっていた。カストレのカレンの自室である。
(あれ?ここは。)
『カレン。ここはあなたの夢。あなたの夢を見せてください。あなたの守りたいものはなんですか。』
どこからかフェリーチェの声が聞こえた。カレンが辺りを見回すと、あるものにカレンは絶句した。
(昔のわたし?)
懐かしいドレッサーの前に座っていたのは自分である。10代中頃の幼いカレンだった。
(この服は)
幼いカレンが着ている白いワンピースには見覚えがあった。
(5年前の戦争でこの服が血まみれになったのを覚えている。)
その時

ドカンッ
轟音とともに大きな揺れがカレンと幼いカレンを襲った。幼いカレンはドレッサーの前から投げ出され後方の壁に激突した。
「おかーさん!」
全く揺れがおさまる気配はなく、自室の窓ガラスが大きな音を立てて割れた。
「きゃっ!」
割れたガラスがカレンに激突する。しかしガラスはカレンを通り抜け幼いカレンに降り注いだ。幼いカレンは即座に頭を手で隠すが、その白い手は一瞬にして血で赤く染まった。
「きゃー!痛い痛い!」
降り注ぐ無数のガラスは無情にも幼いカレンの腕を切り裂いた。カレンの白いワンピースが血で汚れる。
カレンは目を背けた。
揺れがおさまることはなく、勢いよく揺れ続けた。家の柱は軋み、外は人の悲鳴。そしてなぜか銃声が響いている。
「魔層攻防戦。」
カレンは無意識にこの戦争の名をつぶやいていた。

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