新薬
とある研究所

「キャーーーーーー!」
研究所の中を耳を疑うような甲高い女性の声が響いた。
「うるさいなーー」
さっきまでソファの上で昼寝していたツインテールの少女が目をこすりながら実験室に入ってきた。
「アンちゃん!!!見て!完成したよー!」
紫のボサボサの髪の少女、ティアラがキラキラした目で彼女の隣にいる人物を指した。
隣には見たことのない老人が立っている。
「なにその死にかけのじじいは?」
アンちゃんことアンジェリカが不機嫌そうにティアラを睨みつけた。寝起きのアンジェリカは機嫌が悪い。
「このおじいちゃんは能力者なんだけど、実は前にゴーストに殺されてるわけ!
ゴーストは能力者を殺しちゃうのよー」
アンジェリカは目を丸くした。
「もしかして!」
驚いた声にティアラは満足したように微笑むと
「そ!とうとう完成したの!死者を再利用する薬!まあ死体に損傷がなければなんだけどね。ちゃあんとこのおじいちゃんの潰れた心臓は元に戻したんだよ。」
ティアラは無邪気に笑った。

「本当に狂ってるわね。」
現れたのは金髪の女性、セイカだ。
ティアラは照れたように笑うと
「そりゃ何百年も生きてたら頭おかしくなっちゃうよー」
ティアラは隣にいる老人に微笑みかける。
「あら。そういえばそのおじいちゃんって闘技大会でヴァンと戦っていた人ね。」
セイカは老人を知っているのか、老人の顔をまじまじと見つめた。
「これは生きているのは体だけなの?」
ティアラはその質問ににっこり笑うと、
「そうだよ!心はさすがに薬じゃ無理だよ。体の筋肉や神経をもういちどつなぐっていうニュアンスかなあ。おじいちゃん頑張って働いてね!」
老人はその言葉に全く反応しない。ゴーストと同じようだ。ただの戦う道具。
「じゃあ強い能力者を見つけたら綺麗に殺さないとね。」
セイカはティアラに微笑んだ。

「そうだよ!絶対に寛人くんは綺麗に殺してよ!!」
ティアラは嬉しそうに奥の部屋に走っていった。

「それにしてもこの部屋」
「趣味悪いよね〜」
実験室の周りにはホルマリン液につけられた大量の死体が保管されている。強い能力者の死体だそうだ。
「でもティアラの死体コレクションが全部味方になるのは嬉しいわね。」
セイカはにやりと笑った。

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