美しき人
全員の視線は一瞬で美しい声の発信源へと向けられた。そこにいたのは背はシエルほど、カレンより長く青い髪の少女である。
「フェリーチェ様!」
従者が嬉しそうな声をあげて少女の名前を呼ぶと彼女は優しい笑みを浮かべた。
「こんなところにお客様とは珍しいこともあるものですね。」
フェリーチェは大広間の傍にある階段をゆっくりと降りてきた。
「あれ?あの子目をつぶって降りてる。」
シエルが不思議そうにヴァンクールに尋ねると、ヴァンクールは指を口元に添えて、シーとシエルに言う。
「私は目が見えません。
しかし昔の記憶と慣れで私にはみえています。」
フェリーチェは二人の会話を聞いていたのだろうか、全員が考えていた疑問を解消した。
フェリーチェが全員の前に立つ時アシェルは自分が震えるのを感じた。何かが恐ろしいだとか、この場が寒いからとかそういうものではない。
この少女のただならぬ魅力に何故か寒気を感じたのだ。フェリーチェにはいままでの女性にはない魅力がある。深海のようにだんだんと青が深まっていく長い髪、この青の空間には似つかわしくない様々な色の花飾り、背景が透けて見えそうな透明な肌、そして最大の魅力はエメラルドグリーンのまつげで覆われた開かない瞼だ。この瞼の下にある目の色を想像してしまう。この空間に合わさったブルーなのか、それともこの空間のワンポイントとなる他の色なのか。
「ゴクリ...」
アシェルはカレンの生唾を飲む音で現実に引き戻された。カレンは眉間にしわを寄せて彼女を怖がっているような表情をしている。
「カレン?」
アシェルが隣のカレンに声をかけるとカレンはハッとしてにっこり笑った。
周りを見ると自分たちだけではなく、軌跡やミンティアまで彼女に魅了されていた。しかしヴァンクールはいつも通り緊張した面持ちである。

「皆さまがこんなところに来た理由はエテルナから聞いています。」
フェリーチェは歌声のような美しい声で話す。フェリーチェの声は周りの水の音と調和して美しく響いている。
「エテルナ?」
シエルが尋ねるがほとんどが周りの水の音でかき消されてしまった。
「エテルナはえっとなんと言いました?
エージェントです。黒い髪の男の子です。彼とは古い友人なんですよ。」
フェリーチェが話す時は水の音がバックミュージックのように聞こえる。
フェリーチェの言うエテルナはエージェントのようだ。
「あなた方にこの創造の力を渡したい気持ちは強いのですが、この能力を使いこなすのはとても難しいのです。」
フェリーチェは眉をハの字にして俯いてから顔を上げた。
「この能力は不老不死になる代わりに使用者が今一番大切なものもを守る力を手に入れることができる能力です。」

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あきゅろす。
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