着任式2
大歓声の中、王と騎士、付人が飛び出した。
(俺はこれだけの人数をまとめていかないといけないのか。)
王は再認識した。自分の重要さを。
目の前に広がるのは城前広場を埋め尽くしている。城下町に続く通路にもぎっしりと人で埋め尽くされている。そして最大の警備を行いカストレスラムの人間もこの場に呼んでいる。暴動が起こるのではと懸念されていたが、スラムの人々も歓声をあげている。
前にフレイルの着任式を行ったときの三倍ほどの人がいるのではないか。この場にいるのはカストレの人間すべてなのだ。

「皆さんこんにちは。」
歓声がより大きくなった。
「あれ。」
ランスは自分の頬に涙が伝ったのに気づいた。
「ごめんなさい。勝手に涙が。あれれ。」
自分の感情がわからない。この人数に驚いているのかもしれない。不安を抱いているのかもしれない。ここにいるほとんどの人が歓声をあげているのがうれしいのかもしれない。この感情がわからない。
ランスは涙を拭ってから客席ぎりぎりまで前に出た。騎士も前に踏み出したのがわかる。
「この度皆様をここに呼び出したのにはわけがあります。今日から王が変わります。前の王は病気でお亡くなりになりました。」
「今日から私が王になります。ランスです。よろしくお願いします。」
ランスは深々と礼をした瞬間、歓声がより大きくなった。
ランスは顔をあげると後ろに合図を送る。すると騎士十人がランスの後ろに綺麗に横に並んだ。
「そして皆さんと私を支えてくれる強い味方を紹介します。」
ランスは一人ずつ騎士を紹介する。いままで住民は騎士の存在もよく知らなかったのだ。
「三人目はウェルテス。」
その瞬間スラムの人々から大きな声が上がる。
「あの悪戯小僧じゃないか!」
そうウェルテスとクレスタはスラム出身で、昔の騎士に殴りかかって連れていかれたのだ。スラムの人々は二人は死んだものと思っていたのだろう。

「十人めは。寛人。新しい騎士です。こいつは若いんですがとても優しくて頼れる人です。」
ヒロは綺麗な新しい騎士の服を着てガチガチに固まって顔を赤らめている。
「おい寛人、緊張するなよ。」
ランスはヒロの背中をバンッと叩いて笑ってから再び前に戻った。
「私が王になったのでいくつかやりたいことがあります。
一つはもっとこの街に関わっていきたいです。イベントやたくさんの人と交流。楽しい街にしていきませんか!」
一部から歓声があがる。スラムの人が声をあげていない。
「二つめ。スラムとは言わせません!下町です。もっと住みやすい場所にしたいです。」
「みんな手伝ってくれよな!」
ウェルが大きな声をあげるとスラムの人々が大歓声をあげた。




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あきゅろす。
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