希望

だれも言葉を発しないが、表情が変わったのはわかる。
「王子……俺やります。」
小さく拳をあげたのはウェルテスだ。
それに騎士は次々とうなずく。
個人が何を考えているのかはわからないが、少なくともアシェルは
(この人なら……)
とあれだけカストレに対して嫌悪していたのにもかかわらず、期待を抱いたくらいだ。

「ランス……その戦いに僕は含まないでほしい。」
この声はエージェントだ。
「なんで?」
ピンクの髪の騎士、イクサがエージェントを見ずに低音で発する。
「僕には他にやることがあるからね。」
エージェントは胡散臭い笑みを溢すと、ランスの方を見つめた。
「大丈夫。僕はあんたを支えるよ。」
なぜだろう。騎士で一番気まぐれな彼のセリフのはずなのに、安心できる重さがあった。
「みんな……ありがとう。
この国を守ろう……。」
ランスは静かに席を立ち、
バタンッ
と扉の音をたて、食卓から出ていった。

「ランス……。」
ヒロは心配そうに続いて食卓を飛び出す。

そして再びつかの間の静寂。
「えっと……。自由に出ていって構わないので。」
優しい笑顔でクレスタがアシェルたちに言った。

時刻は6時半。
1日目の夜が始まる。


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