青龍アロンダイト
(ほんとにまたカストレに……)
アシェルの心はもやもやしていた。
自らカストレから出たくて抜け出したのに、またこうして戻ってくることになるなんて。
『アシェル。まきこんでごめんね。
セイカに好き勝手させるのはね。』
フレイルが隣で眉を下げて悲しそうに微笑んだ。
(いや、大丈夫だ。
フレイルのやりたかったことは俺がやり遂げないとな。)
『ありがとう。』

アシェルの隣をミンティアが通りすぎたと思うと、勢いよく小さな小屋の外に飛び出す。
そのまま大きく、高く手を広げた。
「じゃあ呼ぶね!」
ミンティアはこちらに首だけ向けて、パチンッとウインクする。

「アロンダイト!」
ゴオオォォ
轟音と共に目の前の海面が膨れ上がったと思うと、海水に光をキラキラと反射させながら、軽く小屋よりは大きい青い龍のような生き物が勢いよく飛び出した。
10メートルほどあるのだろうか、頭がでてから、ようやく美しい宝石のような尾まで飛び出した時、シエルが
「わぁー!」
と、目をキラキラさせながら美しい龍、アロンダイトに近づいた。

「きれいでしょう?
アローは優しいんだよ〜!」
とミンティアがニコニコ笑う。

「でもどうやって浮いているの?」
ランナが顎に手をあげながら、アロンダイトをじっとみつめる。
龍といっても、翼がない。
「うーん。わかんない。」
ミンティアはにっこり笑うとくるりとアロンダイトに向きなおした。

「全員は乗れないから……、
アロー、まずはアストラシアにいって飛行船とってきて!」
さすがにアロンダイトに全員は乗れないと悟ったミンティアが、アストラシアの方を勢いよく指差す。

「待ってくれ、カサハラに俺たちの飛行船がある。カサハラの方が近いからそっちにしようぜー。」
キセキがニコニコ笑いながらアロンダイトの尾を優しくさわった。

ミンティアは一度頷くと、アロンダイトの方にもう一度向きなおして、
「アロンダイト!やっぱりカサハラね!」
と大声をあげる。

『アロンダイトは人の言葉がわかるんだね。』
とフレイルが隣で関心ありげに呟いた瞬間、
「キィー!」
とアロンダイトは鳴き声をあげると体をバネのようにしなり、大空へと飛び上がった。

あっという間にアロンダイトは見えなくなる。
「数分待ってくれる?」
ミンティアはキセキに微笑みかけた。



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あきゅろす。
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