城に着き門番の兵士に
「アシェル・フレデリックです。」
と言うと、

「こんにちは!どうぞ入って下さい。3階の謁見の場にて王様がお待ちです。」
と、かなりの歓迎をうけた。
アシェルは薄汚ない王の顔をおがんでみたいとおもっていたがそれは出来ない。
「ありがとう。」

中に入ると確かにとても大きな階段があった。
なるべく誰にもあっちゃいけない。
ゆっくりと3階まで歩いて登った。
3階。
長い廊下が目の前に広がっていて、廊下の突き当たりにはとても立派な扉があった。
きっとその先が謁見の場なのだろう。

アシェルは扉の前にいる兵士に見つからないように走って、5階に続く階段を駆け上がった。

その時、

「ビー!」とサイレンがなる。
「アシェル・フレデリック!謁見の場は3階です。」
(そりゃそうだよな。)
監視カメラで見られていた。
アシェルは5階へ行くために全力で階段をかけあがる。

「総動員。アシェル・フレデリックをつかまえなさい!」
強い女の人の声が響く。


アシェルはすぐに5階に着いた。
「警戒心がなさすぎなんだよバーカ。」

5階についたアシェルはまず少年を探すことにした。

「あそこか」
すぐにわかった。
…その牢屋から異常な殺気を感じたから。
…他の牢屋と比べ物にならない頑丈な鍵だったから。

「お前がバレンチア人か??」

すぐに
「ああ。俺になんか用??
殺しに来たの??
もう一週間たったっけ??」
と、低い声が返ってきた。

「説明してる暇はねえ!
一緒に逃げるぞ!」

アシェルはナイフを取り出した。
「そんなんで開くの??」
(俺のナイフの腕なめんなよ!)

ヒュッ
風を斬る音。
カランカラン
錠の落ちる音。
「いたぞー!」
兵士の叫ぶ声。

アシェルは中から少年を連れ出し、目的の最奥の牢屋を目指す。
ちらりとみると少年は模様のついた手錠をしていた。
そして少年は走りながら一言。
「やるじゃん。」
(長い廊下の一番奥の牢屋のエレベーター…。)

…見つけた!
しかし、その牢屋には大きな鍵がかかっていた。
すぐにアシェルは錠をさっきと同じ要領で切り落とす。
そしてすぐ後ろに大きくなる足音。
「待ちなさい!」

急いで牢屋に入りエレベーターのボタンを押した。
「早く開けよ!」
バンバン扉を叩きながらアシェルはイライラしていた。

ウィーン。そのイライラに応えるように
エレベーターの扉がやっと開く。
「待て!」
完全に武装した兵士たちがすぐ後ろに立っている。

アシェルは少年と素早く中に乗り込んで、エレベーターの中の閉まるボタンを連打していた。
なかなか閉まらない、
アシェルはかなり焦っていた。
一人の兵士が銃を構えた。「俺たちを殺す気だ」
それを見て少年はボソッと言つぶやく。

(しまった!)
と思ったその時。
バキッ
拳の音。
銃を構えた兵士が倒れた。
「何をするのです!?フレイルさん!」
駆けつけたフレイルが兵士を殴っていた。
すると偉そうな兵士が
「心刀を逃がす気か!?」
と叫ぶ。

その瞬間ウィーンと扉がしまり始めた。
そして先程の兵士がフレイルを指さして、
「この"非国民"を殺せ!」
…そう命令したのだ。
バンッ
なんの躊躇いもなく、銃弾は放たれた。
完全に閉まる瞬間、銃声とともにフレイルが倒れるのをアシェルは見た。
(あっ…、)
一瞬アシェルの中の時間が止まる。
そして全身が震えた。
エレベーターの扉が完全に閉まったあと、刺青の入った頬がまばゆく光る。
この瞬間、アシェルはフレイルが死んで、
俺がなるはずだった心刀にフレイルがなったんだと悟った。


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あきゅろす。
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