20歳の誕生日

アシェルは城の前にいる。
逃げ出せなかった…

「この方が今日心刀となるこの国の誇り!」
「アシェル・フレデリックです!」

すごい歓声。
そして
「本日20歳となる…
フレイル・ストランシー!」

負けない歓声。

城の奥から
ガシャンガシャンと音がして…
こいつがフレイル。
金髪、黒い瞳、そして立派な鎧。

フレイルはアシェルににっこりと笑いかけた。
「はじめまして。よろしくお願いいたします。」
深々と頭をさげる。
アシェルは怒りと悲しみが混ざったような、そんな表情をしていた。

フレイルの隣にいた騎士が
「すぐにお願いします。」
とこそこそと言った。

「では。心刀の契約を」
フレイルは持っていたナイフを取り出して自らの指をおしあてた。少し血がでる。
「あなたも」


もう逃げられない。
今逃げたらきっと殺される。
そう悟ったアシェルは渋々血をながした。

「では!!心刀の誕生です。」
アナウンスと共に歓声が響く。

2人は血のついた親指を重ねた。

「っ!!」

アシェルの目の前が真っ白になった。
親指からいままで見たことのないような光が放たれている。
それと同時にアシェルの頬が痛んだ。触れてみると少し熱を持っている。
「光っている…」
フレイルは肩をおさえている。

「君の頬に刺青が」
目を見開いてフレイルが呟いた。
きっとフレイルは肩に刺青があるんだ。


すごい歓声。
初めて聞くほどの…。

アシェルは父が心刀になった日を思い出していた…
あの時父は嬉しそうだった。

ぼーっとしていると、アシェルは近くの騎士に
「一週間後、誰にも言わずに城へ来てください。」
と言われた。

そしてセレモニーは終わった。

(楽しくなかったのは自分だけ)
…アシェルはそう思っていた。


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あきゅろす。
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