広い海上で

「ヴァン〜危ないよ。」
金鯨バルムンクの頭の上から、
ヴァンクールは海中を覗き込んでいた。
「シエル見てみろ!
魚がいっぱいいるぞ。」
「ほんと!?」
シエルも目を輝かせると、バルムンクの頭上へと走る。

「アシェルはみなくていいの?」
キセキがごろごろしながら、隣で寝転がっているアシェルに尋ねると、
「海の存在は何回か見たから知ってるし、カストレにもそれっぽいものはあったからな。」

「あー。確かにあったな。
それにしても、あのお二人のはしゃぎっぷりったら、なんとも微笑ましいね。」
キセキはシエルとヴァンクールを眺めてにっこり笑った。

「お前たちが変わってるんだよ。私でも少しテンション上がるぞ。」
サギリが隣で顔を少し赤らめて呟く。
「マジで!?
俺、テンション上がってるサギリ姉さん見てるとテンション上がります!」
キセキは突然起き上がりガッツポーズした。

「お兄ちゃんは海は見慣れてるの?」
ランナがメスを磨きながら軌跡を見上げる。
「うーん。まあな…。」
少し口ごもってから微笑んだ。
「キセキはたぶん世界一地理に詳しいと思うな。」
ランスが笑う。
ランスの隣には、ヒロがぐっすり眠っていた。
キセキはヒロをチラリとみてから、
「いえいえ、まだまだっすよ。
俺とアイツの知識足したら95くらいでしょうね。」

「アイツ?」
サギリがキセキに尋ねると
「あー。今から会いに行くやつですよ。
"ミンティア"っていうんですけどね。
世界一の地図を作るっていう変わりモンでしてね。」
キセキは長い髪をなびかせながら、ずっと遠い水平線の向こうを指さす。

「それで、ミンティアの地図班に入隊。
それからカストレへ向かう。」
ランスは小さく微笑んだ。

「…時間は残されてない…か。」
消えるような小さい声でランスは呟くと、

「バルムンク!急いでくれるか!」
と大声をあげた。
その瞬間、足元がひどく揺れた。


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あきゅろす。
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