俺は嘘をつかない。


「なんだよあいつら…」
キセキは頬を膨らませながら、バルムンクの上に寝転がりながら、二人の様子をみる。
すると
「そんなに見るんじゃない!」
と、サギリにめを隠された。


ヒロと杏理が離れたとおもうと、すぐにヒロはバルムンクへと飛んだ。
ランスはバルムンクに乗ったヒロを確認すると
「少し待っていてくれ。」
ランスはすっと立ち上がるとストンと飛び降りた。

「どうしたんだろ。」
シエルがボソッと呟くと、ヒロは
「ねー。」
と笑った。


ーーーーーー

「杏理ちゃん。
留守番よろしく。」
ランスは音もなくじめんにふわりと降りると杏理の方へと駆け足でむかう。

杏理は目に少し涙をためて微笑みながら頷いた。
「はい。ありがとうございます。
ヒロくんをよろしくお願いします。」

「どうせ、ヒロは君に"必ず帰る"とは言わなかったろう?」
ランスはニコッと笑うと
「え…はい。」
杏理は眼鏡を外して目にたまった涙をぬぐう。

「ヒロはウソはつかないからね。
命を掛けた戦いだってわかってる。」
それを聞いて杏理は下を向いた。
「わかってます…わかってますけど。」
ランスに忘れようとしていた事実を告げられて杏理は困惑した。

「でも大丈夫だよ。
俺が責任もって帰すから。」
ランスがにっこり笑う。
杏理もすこしだけほっとした。

「あと、杏理ちゃん、心刀の話はしないでね。
絶対。この戦いにかかわらないでね。
それで傷つくのはヒロだから。」
急に真顔になったとおもうと、真上から見下ろされるような形で告げられる。

この絶対は破ったらいけない。
そんなレベルの声色。
もはや脅しである。

「……」
「"はい"は?」
「…はい。」
その瞬間、ランスの顔がパッと明るくなった。
「うん。それでいい。
君はヒロと幸せになりな。」
ランスはそのまま服をひるがえして杏理に背を向ける。

「が、頑張ってください。」
杏理の震えた小さな声に、ランスは右手を小さくあげた。

ーーーーーー

「待たせたな。」
ランスが戻ってきた。

「なにー?王子、口説いてたの?」
キセキがまだバルムンクに寝転がりながらにやにや笑う。

「はは。まあ、そうだね。ヒロごめんな。」

それを見たヒロはニカッと笑った。


「バルムンク!いいぞ!
クレール島に向かえ!」
よく通る声でランスが叫ぶと、
バルムンクはお腹に響くような低いうなりごえをあげ、ゆっくりと動き出す。

(杏理。さようなら。)
ヒロは潮風に目を瞑った。


[*前へ][次へ#]

4/14ページ


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!