君と一緒に
「おい軌跡、そのクレール島ってのへはどうやっていくんだ?」
「ヘリに人数のらねえぞ。」とアシェルがつけたす。
軌跡はうーんと首をうなだれると、
「はじめの飛行船は…でもとめるとこないっすよね?」
軌跡はランスの方へ目線だけ向けた。
ランスはにっこり笑うと
「もちろん海からお邪魔する。」

「なにかあるのか?」
ヒロはきょとんとしながらランスを見上げる。
「寛人、痛み止は打ったか?」
ヒロは頷くと、
「じゃあすぐいくかー。」
ランスはにっこりと微笑んだ。

「ま、待って!」
バンッとドアが勢いよく開いたと思うと、杏理が急いで入ってきた。
「待ってヒロくん!私もつれていって。」
突然の言葉にヒロは言葉を失う。
「あ、杏理…それはできない。これは遊びじゃないんだ。それに母さんが一人になる。」

杏理はその言葉にうつむいた。
そして、きつく拳を握りしめたと思うと、
「なら、私と契約して。」
空気が凍った。

「杏理、この戦いに入ってこないで。」
ヒロは目を伏せて、口許を押さえて呟くようにいった。
「でも、さっき血まみれのヒロくんを見て…もし…、」
「大丈夫。大丈夫だから。」
杏理は顔をあげてヒロの方を見上げる。
わずかだか涙が滲んでいた。

「そうだ。ヒロは死なない。杏理ちゃんも死なない。だから契約なんかすることないさ。」
ランスがヒロの後ろからひょっこり呟いた。

「ごめん杏理。母さんのこと頼んでいい?
全部終わったらちゃんと帰ってくるから。」
杏理の頭をそっと撫でると杏理は小さく頷く。
ヒロはそのまま一歩前進すると、こちらを振り向かずに
「ちょっと母さんのところに行ってくる。」
と病室から出ていった。

ーーーーー

「杏理ちゃん、契約なんか死亡フラグだよ。やめときな。」
ランスが杏理の耳元で囁く。
それをきいて窓際に立っていたヴァンクールの整った眉がぴくりと動いた。

「ヒロが帰ってきたら、出発しよう。」
ランナがひきつった顔で無理に微笑んだ。
今のランナに契約の話はきつかったのだろう。

その顔を見て、ヴァンクールはひそかに決心する。
(寛人の姉とかはもう関係ない。
ランナを狙うなら、殺すしかない。)

ヴァンクールの顔。
最初に出会ったときの顔、ファルクスカンパニーは終始この顔だった。
(他人の死を考えているときの顔だ。)
アシェルは目を細めた。


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