病室
「ちょっと、あなたたち!」
ヘリが屋上に無事に着陸した瞬間に、白い衣装を着たナースがこちらに向かってきた。

「すいません。ここに芳賀さんっていませんか?」
ヴァンクールがナースに尋ねると、少し考えるようにしてから、
「まさか、この前運ばれてきた…。えっと、青と紫のオッドアイの方ですか?」
ナースの言葉にヴァンクールはうなずいた。

「おい、いくぞ。」
ヴァンクールは後ろの三人に合図する。
「では、ついてきてください。」
4人はナースの後へついていった。

ーーーー

ガチャ
院内はとても静かだった。
風がカーテンを擦る音だけが部屋の中の唯一の音である。

「アシェル」
一番最初に病室に入ったアシェルを迎えたのは、ランナだった。
いかにもほっとした顔で、口もとは笑っている。

「寛人になんかあったのか?」
アシェルは眉間にシワをよせて、病室の奥へ進んだ。

一気に4人も入ったものだから、病室が狭く感じられる。
「寛人!」
「王子!」
アシェルが、病室のベッドの上でぐったりしているヒロを見て声をあげたのと同時に、少し後ろにいたキセキがベッドのとなりで座っているオレンジ色の短髪の青年を見て声をあげた。
そしてヴァンクールが一歩下がったのも、わかった。

「王子…?カストレのか…。」
ヴァンクールは目を細めて呟く。
「ヴァン!ランス王子はいい人だよ!だから今は大丈夫。」
ヴァンクールの肩をささえるようにして、シエルが微笑んだ。
ヴァンクールがシエルの顔をちらりと見ると
「ヒロを助けてくれたのは王子なんだよ。
昔からの幼馴染みなんだって。」
シエルはヴァンクールの不安を和らげるために微笑む。
ヴァンクールは肩のちからを抜いて、病室の壁に腕をくんでもたれた。

「王子が、こいつ助けてくれたんすか?
国王カンカンなんじゃ。」
先に王子に話しかけたのはキセキだった。
「お前、やけになれなれしいな。」
サギリがキセキの肩を叩くと、キセキは目を丸くしてサギリを見ると
「あれ?そうか、サギリさん知らなかったのか。…俺、カストレの騎士なんですよ。」

ヒロ以外の全員の視線がキセキへと集まる。
「はっ…?」

「いや、待ってくれ。キセキは騎士でも、カストレ警備の騎士じゃないんだ。」
ランスがベッドのとなりの椅子から立ち上がった。

「そうそう。俺は地理班っていって、」
「お前、そういうことは先に言えよ…」
サギリが眉間にシワをよせて、キセキに迫る。
キセキは少し照れながら、
「すいません、すいません。」
とへへっと笑った。
そして、
「まあ。俺はカストレなんかに忠誠誓ってないっすから、心配しなくても大丈夫です。俺はミカミのためになれば、それでいいです。」
と真顔で言った。

「おいおい、俺のいないところで言えよ。」
ランス王子は笑う。

ヴァンクールはその様子を黙って見ているだけだった。


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あきゅろす。
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