俺も戦う

「ヒロ、大丈夫か?」
ランスはヒロにちらりと目をやると、静かに尋ねた。
ヒロは未だにポカンとしている。

「王子…、こっそり抜け出したのですね。」
アルヴァはヒロの隣を通りすぎてランスの方へと近づいていく。
「ヒロは関係ないだろ。しかも、能力まで使って…アルヴァ、ヒロを殺す気だったろ。」
ランスは椿を離すと、アルヴァの方へと歩みを進めた。

「これは私の問題ですので、邪魔をしないでいただきたかったのですが。」
アルヴァは困ったようにランスに笑いかけた。
「俺の問題でもあるからな。ヒロは俺の大事な友達だ。ヒロを殺すっていうんなら…、俺と戦え。」

アルヴァはやれやれ、と口元を緩めると、
「一度言ったらやる人ですからね。」
とヒロの方を向いた。

「よかったな。助かって、王子に感謝しろよ。」
ヒロは血まみれの腰を押さえながら立ち上がる。

「ランス…どうして。」
その言葉にランスは
「まあ、勘だよ。」
と、微笑んだ。

「国王に怒られても知りませんよ。」
アルヴァはポケットから通信機を取り出すと、それにむかって
「帰るぞ。」
と小さく言った。

「別にいいさ。俺は間違ったことはしていない。私情は任務の合間に入れるもんじゃない。」
ランスはすれ違いざまにアルヴァに語りかける。
アルヴァはふっ。と小さく笑うと、椿と一緒に校門から出ていった。

ーーーーー

「ヒロ、大丈夫か。」
ランスはヒロの方へ小走りでかけよる。

ヒロは小さく笑うと、
「全然歯がたたなかった。悔しいな。」
と下を向いた。
ランスは血まみれのヒロの体を支えると、
「俺もきっと勝てないさ。よかった、アルヴァと戦うことにならなくて。」
とニカッと笑う。
「ランス、服汚れるぞ。」
ヒロはランスから離れようとする。しかし
「なにいってんだ。病院行くぞ。」
と、ランスは歩き出す。

「どうしてここに?」
ヒロが尋ねると、
「アルヴァがカサハラにいるって聞いたから、もしかしたらと思って飛んできたんだ。」
ランスは鼻をかきながら微笑んだ。

「きっと、俺の着任式でアルヴァに会うだろうな。」
ランスは下を向いて呟く。
「俺にはまだ知りたいことがたくさんある。アルヴァに全部聞くんだ。それから、アルヴァを越える。」
「ああ…俺が国王になれば、カストレの全てがわかる。セイカが何をしようとしているのか、息子のこともわかるかもしれないし、ヒロたちの役にたてるかもしれない。世界を守りたいんだ。だからヒロ、お前は命を大事にしろ。」

「ああ。」
その瞬間、ヒロの頭がかくんとおちた。

「俺も戦うから。」

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