父と母

エージェントが年をとっていない。

それは何かの能力なのか、それとも能力の副作用なのか。

しかし、セイカ並みに注意しなければならない人物であることは確かだ。

ヒロは携帯をポケットにしまってから、部屋を出た。

「あっ。」
部屋の前にシエルとムーが座っている。

「どうしたんだ?」
シエルはヒロを見上げてにっこり笑うと、
「もう少しで着くって!」
と、立ち上がった。

「そっか。
そうだ、シエルはエージェントに会ったことあるか?」
ヒロはシエルに問いかけた。
シエルは一瞬考えてから、首をふる。
「ないよ。」

「じゃあ、今まで会って一番強かったのは?」
シエルは目を丸くして、不思議そうな顔をしたが、

「4番のウェルテスよ。
ほんとに一瞬で負けたよ。
きっとヴァンと互角くらいじゃないかな?」

ヒロはそれを聞くと、部屋の前の廊下の壁にもたれ掛かった。

「父、いや、アルヴァは3番目なんだ。
まだ俺には、」
「だめ!」
ヒロの諦めたような発言にシエルは指を突きつける。
ヒロは目を丸くして、その指を見つめた。

「諦めたらダメだよ!
あたしたち3人で力を合わせたらいい。
そのための仲間なんだから。」

ヒロは必死なシエルを見て、微笑んで
「ありがとう。」

シエルはそのヒロの笑顔を見て、顔を赤らめた。


ーーーー

数分後

「準備してね!」
という、ランナの元気な声が船内放送がなる。

ヒロは部屋のすみに立て掛けてある、黒い鞘の神剣、霞を取った。

(この刀で。真相を暴いてやる。)

ー父は誰なのか。
本当にアルヴァが父親でないなら、なぜ姉の椿はアルヴァに味方するのか。

もしかすると、本当の父親はアルヴァなのかもしれない。

そして母親の存在。

「アルヴァ。姉さん。
俺は見たんだ。」

ヒロは前を向きなおして、刀を背負った。

(アルヴァが母さんを怒鳴ってるところ。)

ーーーー

まだ俺がカストレにいたとき、小さかったからあんまり覚えてないけれど、
あれはアルヴァだった。

鬼のような顔。


でもあんなに小さかった俺の証言なんか誰も信じてはくれなかった。


そして母さんはいなくなった。

ーーーー

「ついたよ!」
ランナの船内放送が流れた。

ヒロは一度息を吐いてから、久々のカサハラの地に足をおろした。



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