仲間
「すまない。」
不意にサギリが謝った。
「どうしたんです。」
キセキは不思議そうに操縦しながらサギリの深い蒼の瞳を見つめる。
「私のせいで…」
「サギリねえさんは悪くない。
むしろいいことしたんじゃない?」
キセキはサギリの言葉を遮って笑いかけた。
「えっ?」
キセキは視線を前に戻して、
「サギリねえさんがここに連れて来てくれたお陰で、被験者の人を救えた。
あと、さっき見たでしょ?
ファルクスカンパニーからたくさん人が出てきたのを。」
「ああ。」
「あの人たち、本来なら助からなかった。
…全員助かった。」
しかしサギリはうつむいた。
「結局ヴァンクールに負担をかけている…。」
助けたのは太陽の力でバリアをはったヴァンクール。
「サギリ。」
不意に優しい声にサギリは顔を上げた。
ヴァンクールの声だ。
「俺はサラバとのことに決着をつけられた。
しかもゴーストに出会っても、アシェルがいるんだし。
サラバはずっと殺してしまいたかった。
サラバの挑発に乗ってしまったな。」
ヴァンクールは口元だけ微笑む。
「すまない。
私が、私がファルクスカンパニーなんかに入らなければ、」
その時、サギリの頭にずっしりと重みがかかった。
「わっ!」
「もう、謝るなよー。
きっとゴーストは俺を殺さない。
セイカが俺を殺したがってる。
だから俺はセイカから逃げるだけ。」
ヴァンクールはにっこりと笑う。
サギリは頭に乗せられたヴァンクールの手を握った。
「私、今度はヴァンの力になる。
今度は私が…」
ヴァンクールがきょとんとして聞いていると、
「おい。キセキ…。
いいのかよ。」
アシェルが笑いながらキセキに話しかける。
「ちょっ!
サギリねえさん!
手を離しなさい!」
キセキがあたふたしながら叫んだ。
機体がかなり揺れている。
「おい。しっかり操縦しろ!」
アシェルは目を丸くしてサギリからヴァンクールを引き剥がすと、先ほどの座席に戻った。
「キセキ!
カサハラまでよろしく!」
ヴァンクールは額に手を近づけてウインクし、アシェルに続いた。
ーーーー
「ヴァンクール。
お前最近、太陽の力使いすぎじゃないか。」
アシェルはヴァンクールの背中を見ながら呟く。
先ほどよりも、傷が浅くなっている。
ヴァンクールはその言葉に振り向くと、
「大したことしてないから。」
と苦笑いした。
「太陽の力って、所持者の生命を削るんだろ。」
するとヴァンクールは座席に腰かけて、
「そうだけど…。」
ヴァンクールの弱々しい声に、
「なんのための仲間なんだ。」
急にアシェルが怒ったような声を出した。
ヴァンクールは目を大きく開いてアシェルを見つめる。
「最初にフレイルと約束した。お前とも"セイカを倒す"って。
なるべく俺たちに言ってくれ。
俺たちを頼ってくれ。」
「あ、ありがとう…。」
ヴァンクールは顔を隠して小さく呟いた。
13-ファルクスカンパニー
終わり
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