死の黒煙

「アシェル!」
ひどい揺れの中でキセキはアシェルを呼んだ。

アシェルはサラバ、いやゴーストから目を離すと穴の空いたエレベーターの内部の瓦礫を使って、中のエレベーターを支えていた太いベルトに捕まった。

そのまま上がっていくと、35階の扉に大きな穴が空いていて、ヴァンクールが手招きしていた。


アシェルは35階へとジャンプして移った。

その瞬間、
「うわっ!」
またひどく揺れた。

そして
「2人ともそっちの壁によれ!」
少し奥でキセキが叫んだので、ヴァンクールとアシェルは素早く指のさされた方の壁際にジャンプする。

その時、床の揺れが今まで感じた事のないようなレベルにまで至ったと思うと、

ドカンッ

と大きな音をたてて、エレベーターや、壁の近くではない廊下などの床が完全に崩れ落ちた。
すなわち、34階とエレベーター以外でつながってしまったということ。

「やべ!」
アシェルの隣でヴァンクールが叫んだと思うと、そのままヴァンクールはコンクリートなどのほこりで見えないが吹き抜けている34階へと手を向けた。

ボンッ

と爆発音が聞こえ、アシェルの目の前が真っ赤に染まった。
ヴァンクールの太陽の炎だ。
あんなのに当たったらひとたまりもないだろう。

「被験者の人達には当たってない。今のうちに逃げるぞ!」
ヴァンクールはそういい放つとフロアの崩れた床を器用に渡って奥へと向かった。

「アシェル!階段行くぞ!」
キセキも奥の非常階段へと走った。

(あの人達…
瓦礫に潰されるんじゃ、)
ほこりでどうなっているかあまり見えないが、アシェルは34階を覗いた。
「アシェル!
大丈夫だ。俺の太陽の力でバリアを張った。
カプセルの中の全員が助かるぞ!」

奥からひょっこり顔を出したヴァンクールの言葉でアシェルは胸を撫でおろした。
『アシェル。
ヴァンは相当疲れている筈だよ。守ってね。』
フレイルに囁かれ、アシェルはうなずくと、非常階段へと走った。

ーーーー


サギリは一人で牢屋の中で座っている時に急に床が揺れ始めたと思うと、どんどん揺れが小刻みになってくる。

(まさか、)
サギリは座っている場所から出来るだけ遠退いた。

その直後、先ほど座っていた場所の床が少し盛り上がり、
ボカンッ
と地面に大きな穴が開いた。
しかも床を破壊したのは、物体でもなく、光のレーザーでもない。
何か真っ黒な煙だった。

その煙はそのまま上の階に穴をあける。
煙なのに、何か光線のように物を貫いていっているように見えた。

(何階からのだろう。
でもこれで牢屋から出られる。)

「うわっ!」
その時、入り口からティアラの声だ。

サギリは驚いて穴の開いた床からひとつ下の階に飛び降りた。
穴が下の階にも続いている。
もっと下から黒い煙が放たれたのだろう。

「サギリーン。
下に行きすぎたら死んじゃうよー!
…この階の入り口だけにバリアかけても意味ないのか…
ゴーストは能力者だけ殺そうとするから!
サギリン、見つかったら死ぬ気で逃げてね!」
ティアラは大きな声で上から叫んでいる。


(ゴーストが現れたのか…)
サギリは穴に背を向けて、ゆっくり歩きだした。

「まさか!」
(ゴーストは下から私を狙ったんじゃ…)
その瞬間、サギリは恐ろしい空気を背後に感じた。


ー振り向き際に微かに見えた顔はまさしく、恐ろしい亡霊だった。

ドッ


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