被験者

「46階まで同じか…」
アシェルは嫌そうに呟いた。

「人間じゃないと言っても、殺すのは…嫌だよな…。」
キセキは小さく呟く。

アシェルとキセキは46階の非常階段の扉を開けた。
一応47階へ上がると、

「あっれ?」
アシェルは目を丸くして眉を下げた。

扉がない。
そして、階段もこれ以上ない。

「50階建てだよな。」
アシェルは頬をかいた。

するとキセキは
「よし!
最後の手段だ!」
キセキはガッツポーズだが、どこか困ったような顔をしている。

アシェルも嫌な作戦だということがわかる。
「な、に…?」

キセキはゆっくりと階段を降り始めた。
そして振り返って
「エレベーターに乗っちゃいます。」

「あっ…あぁ〜。」

ーーーー

46階

エレベーターは2つあり、アシェルとキセキは奥のエレベーターに乗り込んだ。
アシェルはボタンを見ながら
「47階でおりよっ…
あぁー!」
47階を押そうとした瞬間、急にアシェルが叫んだ。

キセキが固まったアシェルが見ているボタンをのぞきこむ。

「34階より下がある!」
キセキも固まった。

「どっち行こうか?」
アシェルが困った顔をして指を泳がせると、
キセキが
「こっちだ!」
と34階を押した。

ーーーー


カプセルの内壁に真っ赤な血が飛び散った。


ヴァンクールは目を見開いてサラバを見つめた。
頭皮がピリピリするのがわかる。

サラバはカプセル内の被験者を殺したのだ。

「ヴァンクール見てみなよ。」
サラバはニヤニヤしながらカプセル内で死んでいる人間を指差した。

すると死んでいるはずの人が急に膝立ちになり、
「ガアアァッ」
と叫び、そして体のいたるところの血管が浮き出たと思うと、
ビュッ
その血管が破裂した。

「ノ、ア…」
と倒れ際に一言何かを呟いて、2度目の死にいたったのだった。

血のついたカプセルが更に真っ赤に染まり、ヴァンクールの顔にも何滴か血がかかった。

「うっ…。」
ヴァンクールが顔を背けたのと同時に、サラバが
「奥さんの名前かな〜。
たしか、ソルフレアかどこかの人だっけな。」
と笑う。

ヴァンクールの驚きの表情はだんだんと殺意のこもったものへと変わる。

ガッ

動いたのはヴァンクールだった。
サラバの首を開いているカプセルの隣のカプセルに押し付けて、銃を握っている手首を思い切りたたく。

銃はガンッと鈍い音をたてて地面に落ちた。
それをヴァンクールは素早く拾う。

あまりにもヴァンクールのスピードが速すぎたので、サラバはただ目を丸くしているだけだった。

瞬く間に、ヴァンクールの握った銃はサラバの額に突きつけられた。

「おい、俺を殺す気か…?」
サラバが声をふるわせて尋ねると、
ヴァンクールは目を見開いて、眉間にシワをよせて今にも泣き出しそうな表情をしている。

「なんで殺した…なんで関係のない人間を巻き込んだ…」
ヴァンクールは低い声で唸った。

「なんでって…
被験者だからか…?」
自らが命の危険にさらされているのに、サラバはいつも通り気楽に話している。
「だったら、会社でなんとかしろよ!
なんで他の人を巻き込むんだよ!」

サラバはあきれたように、
「会社だけじゃ、足りないじゃん。」

その一言に、ヴァンクールの体が動いた。
「だったら、てめぇが死ねよ!」

サラバの前髪をつかみ、カプセルに力一杯叩きつけ、そして銃を突きつけたのは…サラバの口内である。


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あきゅろす。
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