内部.2

「なあ、あれなんだよ。」
ヴァンクールは廊下の角のあの物体を指さした。

それは毛むくじゃらで、しかし形は人間である。

「この階の見回りさせてたんだな。」
サラバはまたいつもの調子で笑った。

「見てみるか?」
ヴァンクールはサラバの顔を一度見てから
「あ、あぁ。」
とうなずいた。

ーーーー

その物体は近くで見れば見るほどヴァンクールは目を疑った。
「化け物じゃねえか。」
震えた声で呟くと、

「失礼だな〜。
この人たちは前は人間だよ。」
サラバの発した一言にヴァンクールは耳を疑った。
この目の前で横たわっている毛むくじゃらの化け物が人間だというのだ。

「てめえらアストラシアでこんなもの作ってたのかよ。」
「見ろ。
このキズ。」
サラバはヴァンクールの言葉を無視して、倒れている巨体を転がす。
地面には血溜まりが出来ていた。

「このキズ…。」
(アシェルか…)
一度突き刺してから上に切り上げたような傷痕。
貫通はしてないリーチの短さと、フレイルの異常な切れ味。

「行くか。
この様子じゃ、他もダメか。」
サラバが先に立って、グンッと鎖を引っ張る。

ヴァンクールは転けそうになりながら、ギリギリ立つことが出来た。

サラバが向かうのは、廊下の突き当たりに位置する重たそうな扉である。

サラバは無言でドアを引くと、
「なんだ。あいつら鍵持ってんのか。」
サラバは本当に興味があるのかわからない口調でドアを開いた。

ーーーー

ヴァンクールは絶句した。
目の前にはいくつかのカプセルがあり、中には先ほどの化け物がねむっている。

「あっ。」
カプセルに近づくなり、サラバは目を丸くした。
「死んでるじゃんか。
と、なれば上も全滅か。

見てヴァンクール。
あのボタン。」
サラバは入り口近くにあるボタンを指す。

ボタンの上には赤い文字でdanger!と書いてある。
「アシェルたちはこのスイッチを押したんだ。
こいつら殺すために。」
「スイッチ一つで死んじまうのか?」
ヴァンクールは辺りのカプセルを見回しながら呟いた。

「この人たちは血縁者だから。」
サラバはひとつのカプセルに手をついて笑った。

ヴァンクールはその笑顔にイラつきつつ、
「血縁者でこんな化け物にしたのか…?」
「血縁者だと、一人が失敗すれば他も失敗なんだ。

どうせ、上も全滅だ。
ヴァンクール。次は下に行こうか。」
サラバは鎖を引っ張った。

ヴァンクールはよろめきながら
(やっぱりこいつは最低だ。)
サラバの背中を見ながら、この会社の内部を見て痛感したのである。



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あきゅろす。
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