内部.1

「ヴァン。行きましょか。」
サラバは2つの手錠の間に固い鎖を引っかける。

ガチャ

重たい金属音が部屋にむなしく響いた。

その後サラバは壁に引っかけてある鎖を外す。
そのお陰でヴァンクールはやっと少しばかりの自由を手に入れた。

しかし、手錠に繋がれた鎖がサラバによって思い切り引っ張られ、ヴァンクールは地面につんのめってしまう。

「わっ!
急に引っ張んなよ!」
ヴァンクールが怒鳴ると

「早く立て。」
サラバはまた鎖を少し引っ張って、冷静な顔でヴァンクールを見下ろす。

(逃げるチャンスが出来そうだな。)
『サラバって弱いの?』
ヴァンクールはゆっくりと立ち上がる。

(わからんな。
でもまあセイカといるくらいだしな…)

サラバはヴァンクールが立ち上がったのを見て、ぐんっと鎖を引っ張った。

「さっ。じゃあ行こうか。
おじさんと社会科見学だ。」
サラバはにっこりと笑う。

ーーーー

サラバはだだっ広い部屋を出たあと、すぐ目の前にあるエレベーターのボタンを押した。

エレベーターを待っている間に
「ヴァン見てみな。」
サラバは天井を指さした。

監視カメラ…
「それがどうした。」
ヴァンクールを見てサラバはバカにしたような笑みを浮かべてから
「ほら。
電源きれてるだろ。」

「ほんとだ。」
監視カメラには全く光が灯っておらず、首が全く動かない。

「お前のお友達がやったんだろな。」
(アシェルが…)

ウィーン。
すぐに目の前のエレベーターの扉が開いた。

エレベーターに2人で中に乗り込むと、サラバはすぐに35階のボタンを押した。

「中途だな。」
「あんまりキリがいいと誰か行っちゃいそうじゃない。」
(今は…49階。
50階建てで…。)

エレベーターの扉が閉まってからものの数秒で扉が開いた。

「くらっ。」
扉が開くと同時にサラバはいきなり叫んだ。

たしかにとても暗い。
誰も行き来していないのだろうか。

「まぁだいじょぶ!」
サラバは片手で鎖を引いてから、もう片方でポケットからごそごそと何かを取り出した。

「これ。便利だぜー。」
気楽に笑ながらサラバはその小さな物体を天井に向けた。

すると一瞬でフロアの蛍光灯がつく。

「全部のフロアで使えるんだ。」
サラバはまた笑った。

しかしそれとほぼ同時にヴァンクールが
「あれ…」
と呟いた。

その視線の先…廊下の曲がり角には、何か得体の知れないものが横たわっていた。


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