亡霊は何を憎む

正直、キセキはこの角を曲がってその先の光景を見ることが怖かった。

「なんなんだよ、こいつら…」
アシェルが信じられないといった様子で、倒れている者を見ている。

「ああ、はじめて見るんだよな。
これは元人間だ。」
キセキの一言によって、その場の空気が一瞬凍った。

「は?」
アシェルは眉間にシワを寄せてキセキを見てから、"元人間"を見つめる。

「嘘だろ…」
「ほんと。
ミカミの人間が実験の対象になってた。
この事は言っちゃダメなんだけどな…。」
キセキは目を伏せた。

「そうだ。
この人たちを救うには、殺すしかないんだ。
アシェル…行くぞ。」
キセキはそう言って、立ちすくんでいるアシェルの横を通り抜ける。

「わかった。」

ーーーー

暗い長い廊下を歩いていく。
すると、左手に大きな扉があった。

今まで見た扉よりも重たそうだ。

キセキがその扉に手を添えり。
「開いてる…」
アシェルがうなずいたのを見てからゆっくり開いた。


「…」
絶句だった。
中はうっすらと明るく、正真正銘研究室のような内装。

そして、そこらに大きな液体の入ったカプセルがあって、中にはあの"元人間"がいた。

アシェルはその一つのカプセルに近づいて、まじまじと見つめた。
「…620-A。
名前まで変えられてるな。」
「こいつらがカストレの戦場に行く予定だったんだぜ。
カストレの敵として…」
キセキが机の上をあさりながら呟いた。

この人たちが来ていたら、戦況は変わっていたのだろうか。

「あっ。アシェル!これ…!」
キセキが急に叫んだ。
何やら紙の束を持っている。

アシェルが小走りで駆けつけると
「被験者たちのカルテだな。」

キセキはパラとページをめくって指をさした。
「あぁっ!」
アシェルは目を疑った。

そこには、
「被験者名、サラバ・アンクルだと…」
サラバの顔写真と詳しい説明。
そして一番気になった項目…

「適性度SS…。」
キセキはポツリと呟いてから一気にページをめくっていく。

「他の奴らはよくてAだ…」
またサラバのカルテに戻してから言った。

「SSって…」
アシェルは苦笑いしながら顔をひきつらせている。

「これはな。死んだ時点でこの化け物に変身すんだ。
サラバが死ねば…」
キセキはサラバのページを読みながら説明した。

そして、一番下に小さく書いてある黒文字に視線をとめた。

NAME:
「Ghost-h…」


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あきゅろす。
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