休息

ナースについてきて医務室に着いたヴァンクールは、大量の機械に驚いた。
しかもこのナースによると、ここにあるもの全てが治療のための機械だという。

医務室の隅にちらりと目をやると、人が入る程の大きな機械のランプが使用中。となっていた。

「あれはサギリ様ですよ。
ヴァンクールさんはあちらの機械になります。」
なぜか、いつもより怪我をさせたことが申し訳なく感じている。

ナースが指さしたのは、サギリが入った機械の隣にある同じ機械だった。
ヴァンクールはあんな大きい物に入る必要ない。
と思ったが、時間もあることだし素直にうなずいた。

案内されて機械の上の台座に寝転ぶ。
するとゆっくり、比較的穏やかな機械音で下がっていった。
ーまるで海の中に落ちていくような…
そんな感覚だ。
そして完全に機械の中に入ると、自動的にゆっくり上の入り口もしまっていった。
そしてすぐにヴァンクールに穏やかな眠りが訪れた。

ーーーー

アシェルたちはヴァンクールに会うために医務室に来ていた。

「ヴァンは…?」
シエルが心配そうに尋ねるとナースは優しく微笑んで、
「今は治療のため、ぐっすり眠っておられます。
すいませんが今は会うことができません。」
その言葉にホッとして、アシェルたちは医務室を後にした。




「じゃあ、宿に戻るか。」
コロシアムの入り口でアシェルは大きな伸びをしながら前方の階段をゆっくり降りていく。
「ヴァンもけっこう苦戦してたように見えたね。」
ランナが少し驚いた口調でみんなに問いかける。

「そうだな。サギリもなかなかの魔力だったし。」
ヒロがランナに微笑みかけた。

「シエル。心配なのか?」アシェルが隣でうつむいて階段を降りているシエルに問いかける。
シエルはぱっとアシェルの方に振り向いた。

「本当にヴァンより強いかもしれない。」
きっとシエルは何だかんだでヴァンクールの方が強いと思っていただろう。


「ヴァンクールなら大丈夫。危なくなったら降参するさ。」
「うん…。」



ーーーー

「ん…」
目が覚めると入る前のように、台の上に寝ていた。

ヴァンクールは大きく伸びをしてから自分の腕を見る。
「すごい。」
今までの怪我がなかったかのように元通りになっている。

「すごいよね。」
隣の機械の台座の上にはサギリが座っていた。

「もう、完全に治っているのでお部屋にお戻りくださいね。入院でも構いませんが。」
ナースがニコニコしながら冗談を言う。
「ありがとう。もう帰るよ。」
ヴァンクールはにっこり微笑んで、台座から降りると医務室をあとにした。

「まっ…待て!」
サギリもそれを追いかける。


コロシアムの長い廊下でヴァンクールはピタリと止まった。
「何だよ、今から用事があんだよ。」
ヴァンクールはむっとして、追いかけてきたサギリを振りかえる。
サギリはポケットからナイフを取りだし、
「これ。」

ヴァンクールは一度ナイフに視線をおとしてから、サギリに戻す。
「これはあんたにあげた物だ。」

「でも…」
ヴァンクールはくるりとまた廊下を突き進む。
「待って。私もついていく。」
するとヴァンクールは
「勝手にすれば。」
とぶっきらぼうに言った。

サギリはヴァンクールの背中を見つめていた。
「似てる…」
ほとんど聞こえないような小さな声だったが、
「えっ…!」
ヴァンクールは驚いた顔でサギリの方を振り向くと、少し眉を下げて、むっとしながら下を向いた。
そしてしばらくしてヴァンクールはまた前を向くと早歩きになる。

「待ちなさいよ〜」

サギリはどこか穏やかな表情で小走りでヴァンクールの元へ走っていった。


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